グーグル、HTCのスマホ事業の一部を1230億円で買収
ソフトとハード、一体開発を強化
【ロサンゼルス=小川義也、台北=伊原健作】米グーグルは21日、台湾の宏達国際電子(HTC)のスマートフォン(スマホ)事業の一部を11億ドル(約1230億円)で買収すると発表した。買収によりソフトとハードの一体開発を強化し、同様の「垂直統合モデル」を強みとする米アップルに対抗する。

HTCのスマホ事業部門に在籍する技術者約4000人のうち、半数がグーグルに移籍するほか、HTCが保有するスマホ関連の特許など知的財産をグーグルにライセンスする。移籍する技術者はグーグルが昨年、自社ブランドで発売したスマホ「ピクセル」の開発や受託生産に関わった人材という。
買収手続きは来年初めに完了する予定。HTCは自社ブランドのスマホ事業を継続するものの、大幅に縮小することになる。グーグルから受け取る11億ドルはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)端末など新規事業の強化に振り向ける。
グーグルのスマホ向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」は85%の世界シェアを握る(2017年予測、米IDC調べ)。ただ、高級スマホを中心に採用が広がる人工知能(AI)やVR、ARなどの新機能やサービスはハードとの一体開発の重要度が増している。
グーグルは12年に米通信機器大手のモトローラ・モビリティーを125億ドルで買収したが、赤字体質を改善できず、特許資産と一部の研究開発部門以外を14年に約29億ドルで中国レノボ・グループに売却した。
ただ、昨年春にハード事業を統括する新部門を設立。モトローラ・モビリティーで社長を務めたリック・オスターロー氏をトップに迎え、再びハード事業強化に動いている。オスターロー氏は今回の買収について、「長期的な投資だ」と述べた。
HTCは米通信大手TモバイルUSA(現TモバイルUS)が08年に発売した初のアンドロイド搭載スマホの生産を受託して以来、アンドロイド端末の主力メーカーの1社だった。だが、韓国や中国勢との競争に敗れ、世界のスマホ市場でのシェアはピークだった11年の8.8%から16年は0.9%まで低下。経営悪化から事業売却の観測がたびたび出ていた。
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