迫る「特許の崖」に特効薬なく 第一三共、米で営業部門半減

2015/10/20付
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国内製薬各社が新薬の特許切れ対応を迫られている。第一三共は19日、米子会社の営業部門の従業員を半減すると発表した。売れる新薬ほど特許切れ後の後発薬登場による売り上げの落ち込みは大きくなる。特効薬となる対策は乏しく、各社の知恵が試されている。

新薬に含まれる物質の特許期間は20年。この期間が過ぎれば、割安な後発薬が次々に売り出される。米国を中心に新薬の販売が急減する状況を崖から転げ落ちる様子に例えて、「パテントクリフ(特許の崖)」と呼ぶ。

第一三共は現在2000人いる米国子会社の営業部門の従業員を半分に減らす。理由は米国での高血圧症治療薬「オルメサルタン」の特許が2016年で切れるからだ。

14年度で年間3千億円弱の世界売上高のうち、1千億円強を米国で販売した。特許切れを見据えて、抗凝固薬「エドキサバン」や他社から取得した鎮痛薬の処方拡大に力を入れるものの、収益確保のためには固定費削減が急務と判断した。

10~13年に立て続けに特許の崖に遭遇したエーザイは業績低迷から抜け出せない。特許切れした主力の認知症薬「アリセプト」と抗潰瘍薬「パリエット」のピーク時の売上高は合計で年間5千億円弱。全体の6割を稼いだ2薬が現在は年間1100億円弱にとどまる。今夏にはアリセプトを生産していた米国工場をバイオ製薬の米バイオジェンに売却。生産拠点の整理にまで踏み切った。

目前に迫った特許の崖に塩野義製薬は先手を打った。脂質異常症薬「クレストール」の16年の特許切れに備え、提携する英アストラゼネカとのロイヤルティー契約を見直した。従来の契約では特許切れと同時になくなるはずだったロイヤルティー収入。料率引き下げの代わりに契約期間を23年まで7年延長した。

世界売上高が年間8千億円に達するクレストールのロイヤルティー収入はピークの13年度で657億円。契約見直しで実入りは少しずつ減るものの、「(一気に落ちる)崖を(緩やかに下る)丘にする」(塩野義製薬)のが狙いだった。

英グラクソ・スミスクライン(GSK)などと共同開発した抗エイズウイルス(HIV)薬の販売急伸が加わり、塩野義の手代木功社長は「(特許の崖は)丘になり、丘もなくなりそう」と自信をみせる。クレストールとHIV薬のロイヤルティー収入は15年度に745億円となる見通しだ。

政府が後発薬の普及を後押しするなか、今後は国内でも特許切れの影響が米国並みに広がる可能性がある。一段と険しさを増す特許の崖。落ち込みの痛みを事前にどれだけ緩和できるかがカギになる。(北沢宏之)

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