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加藤トヨタ副社長「人材育成がイノベーションの土台」

2013年度に販売台数で1000万台を超え、業界トップの座を手に入れたトヨタ自動車。徹底した原価低減で地道に利益を稼ぐ経営手法から「保守的な企業」とのレッテルを貼られがちだが、先を見据えた研究開発も怠ってはいない。トヨタが目指す成長の姿とは何か。技術開発部門を担当する加藤光久副社長に聞いた。

加藤光久副社長

――トヨタにとってのイノベーションとは何でしょう。

「2つあると思う。まずは(創始者の)豊田佐吉の時代から続く気概のようなもの。『障子を開けてみよ、外は広いぞ』だとか『研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし』とか、『豊田綱領』として残っている言葉が今も連綿と続いている。(佐吉の長男の)豊田喜一郎たちが最初に自動車をつくった時も、やるからには絶対に失敗しないという使命感に燃えていた」

「もう一つは将来への種まき。今あるような自動車がいずれはこの世からなくなってしまうかもしれない。その時でも食べていけるネタを今のうちから仕込んでおく必要がある。そんな視点も交えながら、ロボットや電池など新分野について時間をかけて色々と研究している」

――ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)もそうした背景で生まれたのですか。

「そうだ。日本には限られた資源しかない。今は自動車などは石油に頼っているが、将来を考えるともっとエネルギー源を多様化していった方がいい。『プリウス』はそんな考えの延長で世に出たし、14年度中に発売するFCVも同じこと。全固体電池など新たな電池の研究に力を入れているのも、やがて車が電動化していくだろうという将来像を描いているからだ」

「どれも10年単位で研究開発を続けており、シリコンバレーと比べると動きが遅いと映るかもしれない。だが、それはトヨタが現実路線で物を考えているから。思いつきやアイデアはいくらでもある。それを商品にまで落とし込むにはやはり階段を一歩一歩上っていかないと。一挙に100段飛べますというのは難しい。我々には社会的責任もある。供給能力や安全性をどうするかといったことまでを考えて開発している」

――研究開発の予算はどういう考え方で配分しているのですか。

「リーマン・ショック前は目の前の仕事で忙しくて先行研究のお金が少し減った。今はシーリングで毎年一定程度を割り当てている。あわせて開発期間も長くし、人が時間を割いて試作できるようにした。期間も使い、お金も使って車も作る。さらに先行研究もしっかりやるということで今年度の研究開発費は過去最高の9600億円を見込む」

「お金をどぶに捨てる気かという指摘もあるが、そんな使い方でも新しいイノベーションが起こるという可能性もある。自由奔放にさせてみたら、どんどん新しいアイデアが自社の製品に盛り込まれてヒット商品が出せたという例も聞く。度量は広く深く。でないと芽を摘んでしまうこともある」

――失敗などリスクについてはどう考えているのですか。

「トヨタは石橋をたたいても渡らないといわれるが逆だ。ラインに不備があったらすぐ止めたり、在庫を持たなかったり、かつての業界の常識から考えたらとんでもないことをやってきた会社。大事なことはリスクを取る代わりに、二度と同じを失敗しないこと。失敗しても上司とけんけんごうごう議論して、なぜそうなったかを考えるようにしている」

「社内に対しては『技術の前に地位の上下は無い』と口を酸っぱくして言い続けている。上司の命令だけを聞いて仕事をしていれば失敗しないから、というのは大きな間違い。それではその上司と同じ範囲での成果しか残せない。失敗も許容しながら、その上で泥臭い現場教育を通じた人材育成がイノベーションの土台の部分では必要だと思う」

(聞き手は中西豊紀)

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