味の素、M&Aに1500億円強 海外食品やバイオ医療狙う
味の素の西井孝明社長は17日、2020年3月期までの3年間でM&A(合併・買収)に1500億円強の資金を充てる方針を明らかにした。海外の食品メーカーや先端バイオ医療メーカーの買収を検討。成長が見込める海外食品やヘルスケア事業へとビジネスの基盤を広げることを狙う。見据えるのは世界の食品業界における「グローバルトップ10」入りだ。
同日発表した19年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画。設備投資や研究開発にM&Aを合わせた成長投資は計5千億円弱とした。16年度を最終年度とする3カ年計画でも同水準の成長投資を見込み、M&Aも積極化させてきた。だが、これからの3年間で西井社長が描くシナリオはこれまでとは少し違う。
「海外では欧州のほか、東南アジア事業の基盤強化につながるM&Aを検討している」。17日に都内で開いた新中計の記者会見で西井社長はM&Aの候補としてこう説明した。
海外にとどまらない。西井社長は国内でも「今後、成長が見込める先端バイオ医療領域のメーカーの買収も検討したい」と意欲を見せる。医薬品の開発・受託製造会社などが念頭にあるようだ。
「ネスレやモンデリーズ・インターナショナル、ユニリーバ」――。17日の記者会見で西井社長はライバルとして意識する欧米食品大手の名前を次々に挙げてみせた。世界の食品業界で戦うための覚悟は十分だ。
ただ、自己資本利益率(ROE)や利益率などの独自指標で算出した食品業界のランキングで味の素は現状、世界トップ20にも入らない。20年度に「グローバルトップ10」を目指す上では目先の収益力を高める取り組みも欠かせない。
真っ先に課題として挙がるのが1965年から手掛ける飼料用アミノ酸事業だ。家畜のえさに混ぜて使うこのアミノ酸も中国勢の低価格攻勢で苦戦している。今回の新中計では低価格品は海外メーカーへのOEM(相手先ブランドによる生産)を活用、自社では高機能品に特化する方針を示した。
世界に伍(ご)していく食品メーカーに脱皮できるか。味の素にとって勝負の3年となる。
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