スマホ学割、恩恵薄く ドコモなど3社のプラン出そろう
春商戦に向けたNTTドコモなど携帯大手3社のスマートフォン(スマホ)学割サービスが17日、出そろった。格安スマホを意識した最低料金を打ち出したが、消費者が目いっぱい割引を受けるには複雑な条件を満たす必要がある。動画を長時間視聴すると高額を請求されかねない仕組みも一部で復活。実態は恩恵が薄くなりそうな内容となった。
ドコモが17日発表したサービスは、25歳以下の契約者が新たに対象プランに申し込むと月々の料金を1000~1500円割り引く。子2人と両親の4人で通信データ量を分け合う場合、3ギガ(ギガは10億)バイトまでなら子の最低月額は3200円(税別)となる。
これで格安スマホの水準にぐっと近づくように見えるが、実はドコモを15年以上使っている家族がいることが条件だ。そうでなければ段階的に料金は上がり、家族の契約が4年に満たなければ550円高くなる。自宅でドコモのネット回線を利用することも条件だ。
先行して学割を発表したKDDI(au)とソフトバンクは条件の複雑さが一段と際立つ。
いずれも18歳以下なら2980円からスマホが持てる料金体系で、KDDIの田中孝司社長は11日の発表会で「しっかり安くできるプランを踏み込んでつくった」と胸を張った。
だが、まず5月末までに家族が携帯に新規加入したうえで、自宅にネット回線が通っていなければならない。この条件を満たさなければ月々の料金が最大2410円も高くなるのだ。携帯電話事情に詳しいジャーナリストの石野純也氏は「割引条件が複雑すぎて、最低料金になりにくい」と指摘する。
さらにauとソフトバンクは学割適用に、通信データ量に応じて料金が段階的に上がる仕組みを採用した。いまは契約の上限を超えると通信速度が遅くなる不便さはあるが、料金は定額が中心。最低料金の条件を満たさず、データ量増大を意識しなければ、auで最大7500円、ソフトバンクで7390円の請求がくることになる。調査会社のMM総研(東京・港)の横田英明取締役は「利用者にとっては思わぬ高額請求になる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
3社が料金を少しでも安く見せようと腐心するのは格安スマホへの対抗からだ。総務省によれば格安スマホの契約数は2016年9月末時点で1427万件と前年同期より33%増えた。携帯電話全体に占める割合は8.6%と1.9ポイント伸び、10%超えが目前だ。
ソフトバンクの菅野圭吾執行役員は「格安スマホへの対抗として新プランを導入した」と語る。だが家族の総支出で比べると、1人月2000~3000円程度の格安スマホよりも高い現状は変わらない。
ソフトバンクはすべてのスマホ契約者にアイスクリームなどが毎週無料でもらえるクーポンの配布を3月に再開する。昨年10~12月の第1弾が好評だったからだ。ドコモとauも同様のクーポンを配る。
だが、全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀氏は「クーポンよりも料金を下げてもらったほうが消費者はうれしいはずだ」と指摘する。「見せかけ」と受け止められかねない料金体系やキャンペーンを繰り返していると、携帯大手3社から格安スマホへの流出はむしろ加速する。
(大和田尚孝、大西綾)