味の素、成長投資に5000億円 世界トップ10狙う - 日本経済新聞
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味の素、成長投資に5000億円 世界トップ10狙う

味の素は17日、2019年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。設備投資やM&A(合併・買収)などの成長投資に前回の中期計画と同規模の5000億円弱を投じる。少子高齢化で市場の成熟が避けられない国内への依存を脱し、海外で積極投資する。

「ネスレやモンデリーズ・インターナショナル、ユニリーバだ」。東京都内で開いた記者会見で17日、味の素の西井孝明社長はライバルとして意識する企業として世界の食品大手の名前を次々に挙げた。自己資本利益率(ROE)や利益率などの指標で独自に算出した食品業界のランキングで首位のネスレなどを追い、2020年度に「グローバルのトップ10クラス」に入るのが目標だ。

14~16年度に設備投資や研究開発(R&D)、M&Aといった成長投資に投じる資金は合計4884億円の見込み。新たな17~19年度の中期計画でも同規模の資金を成長投資に投じる。

17~19年度の設備投資額は約2300億円の計画。14~16年度の見込み値より2割増やす。重点地域である東南アジアなど5カ国(タイ、ブラジル、インドネシア、ベトナム、フィリピン)や北米での増産に向け、設備投資を増額する。「稼ぎ頭になってきているアジアを成長の柱と位置付け、手を打っていきたい」(西井社長)との考えだ。

家畜のえさに混ぜて使う飼料用アミノ酸事業では、「リジン」と「スレオニン」の自社生産を削減し、海外メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)委託する量を増やす方針。1965年に事業に参入した後、業績をけん引する成長事業だったが、近年は中国勢の低価格攻勢にさらされ、採算改善が経営課題だった。同社は飼料用アミノ酸で、フランスやブラジル、タイなど世界4カ国に生産・販売拠点を持っており、海外メーカーとの協業で生産体制の見直しを進めて生産効率を高める。

R&Dに年間290億円を投じる計画も打ち出した。食感や味、香りから「おいしさ」を感じるメカニズムを解析する「おいしさ設計技術」などに資金を投じる。

ブランド価値を高めるため、新たにグローバルブランドロゴも導入する計画。ブランドコンサルティング大手の米インターブランドが算出した15年度の味の素のブランド価値は6億5000万ドル(約730億円)で、国内企業としては38位。食品では乳酸菌飲料大手のヤクルト(26位、9億1100万ドル)の後じんを拝する。これを2020年度に15億ドルまで引き上げることを目指す。ブランド価値では日用品など他業種を含めて「日本発グローバルブランドでトップ20位以内を狙う」(西井社長)という。

財務以外では「働きがいを実感している従業員の割合」を20年度に80%にするといった目標を掲げる。働き方改革を進め、16年度見込みで1900時間だった年間平均労働時間(日本)を20年度には1800時間に減らす。労働時間を減らしながら収益を拡大するという二兎(にと)を追えるのか、これまで以上に達成が難しい中期計画になりそうだ。

(岸本まりみ、黒瀬泰斗)

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