2018年11月14日(水)

幕上がった日銀vsトランプ相場 初の指し値オペ

2016/11/17 12:00
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世界の市場を揺るがす「トランプ相場」と日銀の攻防の幕が上がった。日銀は17日、あらかじめ指定した利回り(価格)で国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を初めて実施した。指し値オペは、金利をコントロールするために日銀が9月に導入した一策だ。米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利したことをきっかけに、日本の長期金利も上昇。慌てたのは、「金利は制御できる」と大見えを切っていた日銀だった。指し値オペという一手を打った背景には、黒田東彦総裁らの焦りが垣間見える。

黒田日銀総裁

■金利上昇「容認しない」

「米国の金利が上がったからといって、自動的に日本の金利上昇を容認しなければならないということにはならない」。17日午前、参院の財政金融委員会に出席した黒田東彦日銀総裁は強気の発言を繰り返した。

米国で金利が上がれば、日本の金利も当然、影響は受ける。金融市場の常識は認めつつも、「日本の物価・金融動向に合わせてイールドカーブ(利回り曲線)をコントロールする」とも強調し、このところの金利上昇の動きを強くけん制する姿勢を示した。

黒田総裁の国会での発言に歩調を合わせるかのように、日銀は17日、初の指し値オペを実施した。オペ通知を受けて、17日の国債市場ではそれまで上昇が目立っていた長期金利が一時急速に低下した。

指し値オペは、日銀が国債を買う価格(利回り)をあらかじめ指定したうえで、金融機関などから無制限に買い入れる仕組み。「買い入れ価格の一方的通告」「無制限の買い入れ」が従来型のオペとは異なる。

■「非常手段」発動の理由

導入のきっかけは、日銀が今年9月に金融政策の枠組みを変更したこと。コントロールする対象を、世の中に供給するお金の「量」から「金利」へと変えた。市場金利が急激に上下して、日銀が狙った水準から大きく離れてしまうことを防ぐため、新たに導入したのが、指し値オペだ。

しかし、指し値オペは市場介入的な色彩が強く、「国債市場をゆがめる」といった指摘がつきまとう。市場参加者の間でも「非常手段」とみられており、これまで実施されてこなかった。この非常手段に日銀が訴えざるをえなかったのは、米大統領選後の国債市場の混乱だ。

大規模なインフラ投資と減税による経済政策でインフレがやってくる――。こんな見立てが急速に強まり、世界の国債市場では将来のインフレ到来を予想する国債売りが活発化。米国を中心に先進国の利回りが軒並み上昇基調を強めるなか、日本でも海外投資家の保有が比較的多い短中期債を中心に売り圧力が強まるなど日本の国債市場にもじわりと影響が出てきていた。

■「応札ゼロ」が示す意味

今回の指し値オペの買い入れの対象は、残存期間が「1~3年」と「3~5年」。トランプ相場により、特に海外勢による売却が目立っていた銘柄だ。オペの実行部隊である日銀の金融市場局は17日、今回の指し値オペについて、「このところの短中期債の急速な金利上昇を踏まえたもの」と説明した。

17日の指し値オペは日銀が力ずくで金利を押し下げようとしたというより、市場に対するアナウンスメント効果を重視している面が大きい。日銀は新発2年物国債をマイナス0.090%、新発5年物国債をマイナス0.040%で無制限に買い入れる方針を示した。

これは、オペの通知前に市場で取引されていた金利水準よりも高い利回り(低い価格)だ。市場の実勢価格よりも安い水準で日銀に売りたいと考える参加者は少なく、12時前に明らかとなったオペ結果は応札がゼロとなった。

■「市場に送ったメッセージ」

それでも、国内の国債市場関係者は「今回のオペが市場に一定の効果をもたらした」と見る。17日の国債市場では日銀が買い入れの対象とした2年債や5年債だけでなく、10年債など幅広い年限の国債がオペの通知前に比べて利回りが低下した。

東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「米国発の金利上昇の動きが深刻にならないうちに、早めに市場にメッセージを送った」と評価する。

今後のトランプ政権の政策運営次第では、日本の金利も再び大きな影響を受ける可能性は拭えない。日銀が「メッセージ」のみで市場の動きを沈静化できるかどうかは未知数な面もある。

(浜美佐)

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