2019年2月19日(火)

伊藤ハム・米久が経営統合発表 「新興国の食欲」再編促す

2015/9/16付
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伊藤ハムと米久は15日、2016年4月に経営統合すると正式発表した。両社は純利益が過去最高を記録するなど、足元の業績は好調だ。ただ、中長期では国内の縮小に加え、中国などでの食料需要急増に対する危機意識は根強い。食肉調達で新興国勢に買い負けることが懸念されるからだ。「世界食料地図」の変貌が再編を後押しする。

伊藤ハムと米久は持ち株会社を設立し傘下に入る。伊藤ハム株1株に新会社株を1株、米久株1株に同3.67株を割り当てる。持ち株会社の社長には伊藤ハムの堀尾守社長(67)が就き、取締役は伊藤ハムと米久が2対1の割合で指名する予定。社名などは11月上旬までに詰める。伊藤ハムと米久の株式は16年3月29日付で上場廃止となる。

新会社の売上高は6千億円を超え業界3位のプリマハムを引き離す。伊藤ハムが2014年度決算で24年ぶりに最高益を更新するなど足元の業績は好調で、楽観ムードが広がっているようにみえる。しかし、業界内では業績とは裏腹に危機感が募る。一つは人口減による国内需要の減少。そしてもう一つが新興国での急激な食料需要の増加だ。ある大手食肉の首脳は「豚も鶏も牛も全部中国に持っていかれている。奪い合いだ」と語る。

例えば輸入の牛バラ肉(ショートプレート)。中国との競合で、米国産(冷凍品)の取引価格が14年は1年間で9割高の1キロ1100円前後となった。これが牛丼チェーン各社の値上げにつながっている。中国の経済発展によって「肉食化」が進み、急騰した。

牛肉はバラ肉以外の部位も高値だ。米国産のテンダーロインは今夏、1キロ4600円前後と前年同期比3割高で取引された。国際的に食肉の争奪戦となっており、量の確保に神経をとがらせることになりかねない。加工食品の原料となる豚肉も病害で昨年、価格が上昇した。今後も新興国の動向によって上昇することが懸念されている。

経済協力開発機構(OECD)や国連食糧農業機関(FAO)の予測によると、中国での23年の消費量は牛肉が850万トン、豚肉が6187万トンと11~13年の平均消費量よりそれぞれ2割弱から3割程度伸びる。同期間で日本の消費量の伸びは数%にとどまる。

伊藤ハムと米久両社の筆頭株主である三菱商事が両社と09年に包括提携を結び、食肉分野で補完関係を築いてきた。しかし、危機意識をもとに、競争力を高めるには大がかりな再編が必要と判断、経営統合を選んだ。

食肉事業では伊藤ハムは牛と豚に強く、米久は豚と鶏に強みを持つ。伊藤ハムが今年3月に子会社化したニュージーランドの食肉大手、アンズコフーズを含め、統合後の食肉事業の売上高は5000億円規模に拡大する。三菱商事の畜産関連事業を加えれば1兆円規模と国内首位の日本ハムを大きく上回る。

伊藤ハムが経営ビジョンで掲げるのは「アジアの中で最も信頼される食品加工メーカー」。新会社にとって海外自体は魅力だ。買い負けずに需要を取り込むという難しいかじ取りが求められる。

(安川寛之、小太刀久雄)

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