2018年9月19日(水)

東芝半導体、残る訴訟リスク 米裁判所が判断先送り

2017/7/15 19:11 (2017/7/15 22:08更新)
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 東芝の半導体メモリー事業の売却差し止めを求めた米ウエスタンデジタル(WD)の訴訟で、米カリフォルニア州の上級裁判所は14日(日本時間15日)、判断を先送りした。28日に再審問する方針だ。東芝は官民ファンドの産業革新機構が軸の「日米韓連合」などとの売却交渉を当面進められるが、裁判所は法的な争点への判断を保留した。訴訟リスクはなお残る。

米カリフォルニア州の上級裁判所(14日)

米カリフォルニア州の上級裁判所(14日)

 米上級裁判所がWDと東芝の双方の主張を聞く初審問を14日開いた。28日の再審問まで判断を先送りする一方、再審問まで東芝は「売却手続きを完了できない」とした。

 「売却完了」とは買収代金の払い込みが終わる手続きの最終段階を指し、現在進めている日米韓連合などとの交渉は続けられることになる。東芝は「当社が進めているメモリー事業売却の契約締結を妨げるものではない」との声明を出した。

 米裁判所が14日にWDの差し止め請求を認める可能性もあるとされてきただけに、東芝が交渉を止めざるをえない事態はひとまず避けられた。

 米裁判所は14日の審問で「東芝は売却が完了する2週間前にWDに通告する手続きをとってはどうか」との提案を示したものの、通知後にWDが東芝の売却を拒否できるかどうかという争点には見解を示さなかった。

 米裁判所はWDの権益の範囲など、訴訟を巡る他の争点にも言及しなかった。売却交渉を継続できたとしても、東芝は訴訟リスクを抱えたまま交渉を進めざるを得ない。

 2社は国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所でも同様の訴訟を抱える。WDが米裁判所に求めたのは、国際仲裁の判断が出るまでの売却の差し止めだ。両社の争いの「本番」は国際仲裁裁判所になる見通しだ。

 売却交渉では6月下旬に優先交渉先に選んだ日米韓連合との条件調整が続く中、東芝は訴訟を抱えるWDの陣営との再協議にも入った。協議でWDとの意思疎通を図りながら、どこまで訴訟リスクを低減できるかも交渉の行方を左右しそうだ。

■専門家の見方

柳田国際法律事務所の柳田一宏弁護士

柳田国際法律事務所の柳田一宏弁護士

 柳田一宏弁護士の話 カリフォルニア州上級裁判所の次回28日の審問は、差し止めの内容に踏み込んでの判断となるのではないか。情報遮断を巡る別の審問と合わせて判断をするようなので、管轄を巡る判断にとどまることはないと思われる。

 内容に踏み込む判断が示される場合、個人的には東芝に有利な判断、つまり差し止めは認められない可能性が高いと考える。

 合弁契約は、半導体メモリー事業そのものではなく、合弁会社の株を売却することを禁じている。従って形式的に東芝に株を残したままであれば、契約に基づいてウエスタンデジタル(WD)が東芝の事業売却そのものを止めるのは難しいと解される。WD側は東芝の事業売却が、株の売却と実質的に同じであるという主張をしなければならず、かなり困難だと考える。

 仮処分の間も国際仲裁裁判所での仲裁が続くだろうが、数年かかる可能性があるので、その間に何らかの和解に至るのではないか。

早川吉尚・立教大学教授

早川吉尚・立教大学教授

 早川吉尚・立教大学教授の話 28日に再び審問を開くことにしたのは、上級裁が影響の重要性を認識し、納得が得られる判断を下す必要性を感じたからだろう。仮処分は結論を短期間で出すことに意味があるので、どんなに遅くなっても8月上旬には結論は出すだろう。

 仮処分の決定は東芝側に不利になるとみている。司法が仮処分が必要かを判断する場合、緊急を要するかどうかが一つの基準となる。仮に今、仮処分で差し止めできず、仲裁判断が出るまで待った場合、その前に東芝の半導体事業は他陣営に売却されてしまう。仮にWDが仲裁で勝っても売ってしまったものを元に戻せというのは難しく、損害賠償で解決するしかなくなる可能性が高い。これは「緊急性が高く、取り返しがつかない」という仮処分の要件が当てはまるので、差し止める可能性が高い。仮処分の場合は短期間で判断するので、100%クロでなくても、グレーならばとりあえず差し止めを出す。

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