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環境激変、缶を捨てた「缶コーヒーのボス」

サントリー食品インターナショナルは15日、缶コーヒー「BOSS(ボス)」ブランドで、ペットボトル容器の新商品を発売すると発表した。ペット容器採用の大型商品は初めて。缶コーヒーの有力ブランドが発売25年目にして、なぜ、大転換を選ぶのか。「脱・缶コーヒー」に踏み出す背景には、様変わりした日本のコーヒー事情がある。

伸び悩む「稼ぎ頭」

サントリー食品の「クラフトボス ブラック」

「缶コーヒーじゃない『ボス』を柱に育てていく」。15日に都内で開かれた発表会で、柳井慎一郎執行役員は「缶コーヒーのボス」というキャッチフレーズをあえてもじり、新商品への自信を示してみせた。

4月4日に発売する「クラフトボス ブラック」(500ミリリットルで税別160円)は、華やかな香りとすっきりしたコクが特徴。しかし、これまでの商品とは見た目からして違う。透明なペットボトル容器を採用しているからだ。外見は缶コーヒーには全く見えないが、なぜ、いま、「脱・缶」なのか。

飲料メーカーの缶コーヒーは飲料全体の25%(金額ベース)を占める大型商品だ。日本コカ・コーラのジョージアは年間1億ケース超を売り、全社の飲料ブランドの中でも首位。ボスや、アサヒ飲料のワンダなど各社が著名ブランドを抱える。ほかの飲料に比べて単価が高く、利益を生む「稼ぎ頭」でもある。

ところが、その地位は足元で、ぐらぐらと揺らいでいる。2016年のコーヒー総市場が前年比2%増の一方、缶コーヒー市場は微増にとどまった。全体を押し上げているのは、100円程度の低価格、そして出来たて感が強みのコンビニエンスストアなどの「いれたてコーヒー」だ。

味覚まで変える「いれたてコーヒー」

いれたてコーヒーの台頭は脅威そのものだ。じわじわと浸透し、今や消費者の舌を変えているからだ。サントリーの柳井執行役員によると、「以前に比べてコクや苦みの許容度が上がっている」という。砂糖やミルクなどの含有量が多く、「甘い」というイメージが強いままでは、缶コーヒーを敬遠する動きが強まっていく恐れはある。

もちろん、メーカー各社は試行錯誤を続けてきた。サントリー食品は2016年、酵母発酵のコーヒー豆を焙煎(ばいせん)した新商品を発売。アサヒ飲料は老舗コーヒー店と組み、深いコクを持つ商品を投入した。いずれの商品も、缶コーヒーのみならず、いれたてコーヒーも愛飲している消費者に支持されているようだ。

サントリー食品は、「クラフト」を冠する今回の新商品でも味わいにこだわった。豆の選定から、焙煎、抽出までで200超もの工程を採用し、5種類の豆のコーヒーをブレンドした。

ターゲットは缶コーヒーを飲む機会が少ない若い世代のオフィスワーカー。そして、その切り札がペットボトル。いつも横に置き、「仕事中にちびちび飲める」ような設計だ。

「缶」の古くささを消す

ここ数年、メーカー各社はいれたてコーヒーに対抗してボトル缶に力を入れてきた。味わいを近づけ、蓋を閉められるという点で支持を集めている。ボトル缶のコーヒーは2016年に3割超と急成長し、従来の200グラム弱のショート缶の落ち込みを支える。

ただし、ボトル缶には弱点がある。缶そのものの原価は、製造の手間がかかるボトル缶がショート缶をはるかに上回るのだ。メーカーとしてはボトル缶を増やすほど、うまみである利益率を大きく下げてしまう。

見た目にも壁がある。柳井執行役員は「若い世代を中心に『缶』に古くさいイメージを持っている」とも指摘する。コンビニコーヒーなどで主流の透明なカップに、新鮮さを感じる消費者が増えているのだ。そうした課題を解決するための回答がペット容器とも言える。

飲料メーカーにとって、主力の缶コーヒーのテコ入れは避けて通れない課題だ。もちろん、従来の缶で今までのファンをつなぎとめることは大切だが、それだけでは成長は難しい。あえて缶を捨てて投入した新商品で、新しいファンをつくれるのか。「外面」にとらわれない挑戦の成否は、缶コーヒー市場の将来を占う。

(名古屋和希)

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