米有力VC、日本限定で38億円投資 「2~3年で60社」

2017/6/15 14:26
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米有力ベンチャーキャピタル(VC)の500スタートアップスは15日、日本向け1号ファンドで3500万ドル(約38億円)の資金調達を完了したと発表した。当初の目標額の3000万ドル(約33億円)を上回る。官民ファンドのクールジャパン機構から新たに約11億円を上限に出資を受ける。日本のコンテンツやファッション、先端技術などのクールジャパン分野で事業展開するベンチャー企業(VB)を両社で発掘・育成。成長資金や経営ノウハウを提供することでVBの世界展開を後押しする。

500は2010年に米シリコンバレーで設立。創業間もない「シード」と呼ばれるVBに特化して投資しており、運用総額は約3億5000万ドル、世界60カ国・1800社以上に投資している。

都内で記者会見した500スタートアップスのライニー氏(左から2人目)、クールジャパン機構の小川氏(右)ら

都内で記者会見した500スタートアップスのライニー氏(左から2人目)、クールジャパン機構の小川氏(右)ら

日本向けには10年から投資を開始。当初は米国から直接投資をしていたが、新たに日本に特化した1号ファンドを設立。ニコン三菱地所、みずほ銀行など日本の大企業から資金を集め、16年2月から投資を開始していた。これまでの投資先は累計38社に上る。

500は世界各国で同様の地域ファンドを運用している。今回クールジャパン機構から出資を受けることで日本が最大規模になるという。日本法人代表のジェームズ・ライニー氏は15日の記者会見で「今後2~3年間で60社ほどに投資していきたい」と語った。投資分野は限定はせずに「海外展開をめざしている企業に幅広く投資していく」という。

シリコンバレーの有力VBが日本の官民ファンドと手を組んだのは、投資先のVBの事業がある程度軌道に乗ったときの追加的な資金需要に対応するためだ。500はシードやアーリーと呼ばれる事業立ち上げの初期段階の投資を得意とし、1社あたり数千万円~2億円程度とする。ライニー氏は、事業が失敗に終わる確率は非常に高いというが、同社はその中から伸びている企業を見つけ出し追加で投資していくスタイルだ。

一方、VBが本格的に海外展開するには、製品サービスの量産化やマーケティングのまとまった資金が必要になる。自前で出すのは難しいため、ここでは豊富な資金を持つ官民ファンドの出番となる。クールジャパン機構では500のファンド経由でのシード投資とは別に、「(10億円規模の)大きなお金が必要なとき我々が投資していく」(小川剛シニアディレクター)方針だ。

モデルケースはある。越境電子商取引(EC)事業を手掛けるトーキョーオタクモードだ。同社は12年に500スタートアップスの創業プログラムに参加し、数百万円の投資を受けた。500が用意する「メンター」と呼ばれる起業経験者や専門家からアドバイスを受けられる制度を利用した。小高奈皇光・最高経営責任者(CEO)は「米フェイスブックや米グーグルの人からウェブサービスの開発ノウハウの話が聞けて大きな財産になった」と語る。14年にはクールジャパン機構による最大15億円の出資が決定。現在ではフィギュアやぬいぐるみなど日本の商品を世界130カ国に販売する。

成功事例が生まれつつあるとはいえ、ライニー氏は「日本にはまだまだ課題がある」と指摘する。例えば英語で発信する日本VBの情報が少なく、海外から投資を受けているVBはごくわずか。年間のベンチャー投資の規模も日本と米国では36倍以上の開きがある。500などの取り組みが「内弁慶」ともいわれる日本のVBが本格的に世界に展開するきっかけとなるか注目される。

(鈴木健二朗)

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