農薬・種子の大型再編、取り残される日本

2016/9/15 14:10
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ドイツ医薬・農薬大手のバイエルによる遺伝子組み換え種子最大手の米モンサント買収から一夜明けた15日午前の東京株式市場では、住友化学やサカタのタネなど日本の同業株価は反応薄だった。ただ、今回の再編を通じて見えてくるものがある。世界の「食糧争奪戦」から日本が取り残されかねない現実だ。

15日午前の東京市場。農薬に強みを持つ住友化学の株価は一時前日比0.7%下落、種子大手のサカタのタネは同0.6%上げた程度だった。年間売上高260億ドル(2兆6500億円)と世界の農薬・種子市場で首位の座を固めるバイエル・モンサント連合の誕生は東京市場ではほとんど材料視されなかった。

■背景に「食糧争奪戦」

世界の農薬・種子業界では大型再編が相次ぐ。昨年12月には米デュポンと米ダウ・ケミカルが経営統合で合意。今年2月には中国国有化学大手の中国化工集団がスイスのシンジェンタを買収すると発表した。そして、今回のバイエルのモンサント買収だ。

背景にあるのは人口増大で激しさを増す「食糧争奪戦」。収穫量を効率よく増やせる種子や作物を生み出す技術を提供できれば、それだけ各社のビジネスチャンスは広がる。

ますます巨大化する農薬・種子業界。世界トップ3の関連売上高は年1兆円を超える。関連事業の売り上げ規模が3000億円以上の住友化学や、約600億円のサカタのタネなど日本勢は規模ではとてもかなわない。

■農家や消費者の負担増す恐れも

影響は個別企業にとどまらない。農薬や種子市場を海外勢が牛耳れば、日本はその都度、安全性の確認に追われることになる。消費者が不安視する遺伝子組み換え(GM)技術を使った種子や作物となればなおさらだ。

加えて海外大手がわざわざ日本の土壌や気候に適した種子や農薬を作り出すとは考えにくい。海外勢が規模のメリットを生かして安価な種子や農薬を世界で提供する傍らで、独自開発を迫られる日本。そのコスト負担は最終的には農家や消費者が背負うことになる。

日本の食料自給率は4割(カロリーベース)と先進国で最も低い。効率よく作物を育て収穫するために日本は何をすべきか。食糧問題を左右する農薬・種子業界の大型再編は「海の向こうの話」では済まされない。

(相模真記)

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