楽天 2期連続減益 16年12月純利益379億円、ポイント費用重荷
楽天が主力のインターネット通販事業でポイントへの依存を高めている。13日に発表した2016年12月期の連結決算(国際会計基準)はポイント費用が重荷となり、純利益が前の期比14%減の379億円と2期連続で減益となった。通販市場の競争は激しく今後もポイントは減らしづらい。海外事業も2期連続で200億円を超える減損損失を計上、ネット通販と海外事業のてこ入れが急務だ。
16年12月期通期の売上高は7819億円と10%伸びたが、営業利益は18%減の779億円だった。収益の足を引っ張ったのは「楽天市場」など国内の電子商取引(EC)事業のポイント費用だ。前期からカードやスマートフォンなどグループサービスの利用状況に応じてポイントを最大7倍に増やした。ネット通販市場で攻勢をかけるヤフーや、米アマゾン・ドット・コムなどに対抗するためだ。
ポイント効果で16年は取扱高に当たる国内ECの流通総額は四半期ベースで前年同期比10%から14%伸びたが、これはホテル予約なども含めての数字。「楽天市場」単体では1割前後にとどまった可能性が高い。ポイントを減らせば流通総額が減りかねず、かつてスーパーがセールに依存して収益力がじりじりと落ちていった姿にも重なる。
ユーザー評価で質の悪い出店者の排除など品質向上を進める半面、ある日用品の出店者は「楽天経由の売上高は安定しているがずっと横ばい」と悩む。
海外事業も黒字事業はキャッシュバックサイトの米イーベイツくらいで、赤字事業が多い。前の期の388億円の減損損失に続いて、前期は動画配信関連の米ヴィキなどの「のれん代」243億円の減損を計上した。対話アプリのバイバー(キプロス)は約1000億円の「のれん」が残っており、収益見通しが狂えば今後も減損を迫られかねない。
一方、金融事業は好調だ。楽天カードは通販サイトと連動した手厚いポイントで新規加入と利用金額が増え、前期の取扱高は2割増の5兆円と年内に業界首位が射程に入ってきた。収益性の高いリボルビング(毎月定額払い)残高も増え、カード事業の営業利益は24%増えた。銀行や証券事業も伸びている。
ただ収益性の高い金融事業も入り口に当たる「楽天市場」の基盤が安定しないと「楽天経済圏」に顧客を囲い込み全体で稼ぐという同社のビジネスモデルが揺らぐ。三木谷浩史会長兼社長は13日の決算会見で「ポイント施策は漢方薬のようなものでじっくり効いてくる」と説明するが、実際に目に見える効果が表れるのか。今期はポイント施策の成否を試す年となりそうだ。
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