東芝半導体、台湾TSMCが応札断念 CFO「相乗効果ない」
【台北=細川幸太郎】東芝の半導体メモリー事業の売却を巡って、半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が応札を断念していたことがわかった。13日に台北市で開いた決算説明会で何麗梅最高財務責任者(CFO)が「熟考したものの、我々の事業とは異なり相乗効果はない」と話した。東芝は2次入札に向けて応札企業との交渉を進めている。
TSMCの劉徳音・共同最高経営責任者(CEO)は「メモリー事業は(技術の陳腐化が進みやすい)コモディティービジネスだ」と語り、本業の半導体受託生産(ファウンドリー)事業に注力する考えを示した。東芝側が2兆円規模の売却額を求めていることについて何CFOは「メモリー市況は今が非常によい状態」とし買収金額の高騰も示唆した。
豊富な資金力を持ち事業の重複もない有力候補と見られていたTSMCは東芝のメモリー事業を「評価している」と表明し出資を検討していた。同じ台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が共同買収を持ちかけたとされ、TSMCの動向に注目が集まっていた。
3月末に締め切った1次入札では、米ウエスタンデジタル(WD)や韓国SKハイニックス、米ブロードコムといった半導体メーカーのほか、複数の米系ファンドも買収提案した。東芝は応札企業との個別交渉を開始。買収金額だけでなく継続投資や雇用維持などの条件をもとに2次入札に向けての選定作業に入っている。
ただ12日には生産面で提携関係にあるWDが東芝に対して独占交渉権を求める意見書を送付したことが明らかになった。WDが第三者への事業譲渡を拒否する姿勢を示したことで、2018年3月までの売却完了を目指す一連の手続きが停滞する可能性もある。