東京五輪へトヨタ動く IOC最高位スポンサーに

2015/3/14付
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トヨタ自動車は13日、国際オリンピック委員会(IOC)と最高位の「TOP」スポンサー契約を結んだ。米コカ・コーラなど世界有数企業が名を連ねる同契約だが、これまで自動車メーカーが登場したことはなかった。2千億円程度とみられる契約金は「標準」とされてきた従来の300億円前後を大きく上回る。スポーツ振興支援に加え、2020年の東京五輪で燃料電池車(FCV)など先進技術をアピールする好機ととらえる。

来日したトーマス・バッハIOC会長とトヨタの豊田章男社長が同日、都内で調印式を開いた。バッハ会長は「トヨタは持続可能なモビリティーのリーダー。理想のパートナーを得た」と熱く語った。豊田社長も「自動車産業へのエールだと思っており、チャレンジを求められている」と話した。両者は固く握手し、会場は終始、和やかなムードに包まれた。

背景にあるのが破格の契約金だ。調印式で明らかにしなかったが、2024年までの10年間で2千億円程度とみられる。TOPスポンサーはパナソニックブリヂストンに続き国内企業3社目だが、パナソニックの契約金は8年で300億円程度とみられる。

トヨタは自動車メーカー初という栄誉も得た。五輪のスポンサー制度は3つ。TOPスポンサーのほか、各大会の組織委員会のスポンサー、日本オリンピック委員会(JOC)など各国の組織のスポンサーだ。トヨタは1997年からJOCスポンサーとして五輪運営を支援してきた。しかし、11社が契約しているTOPスポンサーに、IOCは85年の制度開始以来、自動車メーカーを加えてこなかった。

自動車はどの国でも基幹産業であり、地域色が濃く出てしまうためといわれている。各国の組織委員会にとって重要なスポンサーになっていることなども理由だ。

だがIOCが2014年末、五輪改革案「アジェンダ2020」を承認したことで風向きが変わった。「持続可能な五輪運営の観点で、交通管理は重要な課題」(バッハ会長)として自動車をTOPスポンサーの対象として検討し始めた。IOCのスポンサー収入は09~12年で9億5千万ドル(約1150億円)と増加傾向にあり、さらなる上積みへ資金力のある業界に目を向けたようだ。

1業種1社が原則のTOPスポンサーの座を巡っては、トヨタのほかに複数社が水面下で交渉していたもよう。13年度で4194億円を宣伝広告費として投じたトヨタでも、内部では膨大な費用に異論も出た。だが東京五輪は先進技術をアピールする絶好の機会と判断。20年をメドに開発を進めるFCV「ミライ」の次期型のほか、自動運転車などの投入を見据えている。

IOCとの契約により、東京五輪以外の会場でも車の提供が可能になる。24年には欧米での開催が検討されるなど、トヨタが重要視する市場でのアピールにつながる。ただ豊田社長は同日、「自動車業界の一員として引き受けた。各国のメーカーと協力したい」とも語った。東京五輪では、会場間で選手や関係者を運ぶ「足」として数千台の車を提供するが、一部を他メーカーにお願いすることも検討する。トヨタ1社が突出することによるあつれきも考慮する。

トヨタは野球やラグビーなど35の企業スポーツチームを自ら手掛け、「日本のスポーツ振興のリード役」の立場も期待されている。豊田社長自身も、学生時代に「グラウンドホッケーの選手として鍛えられた経験が私の大きな支えとなっている」と語り、スポーツの恩恵に対する感謝を示した。豊田社長は経済三団体が発足させる東京五輪支援の新組織のトップに就任する見通しだ。

「TOPスポンサーの契約は、単に五輪マークで車を売るための広告にとどまらない」(関係者)。トヨタは様々な狙いをもって、車生産以外での「大型投資」に踏み切る。

(大島有美子)

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