/

スズキ、規模と利益の二兎追う 15年3月期6年ぶり営業減益

(更新)
決算発表するスズキの鈴木会長兼社長(11日、東京・大手町)

スズキは11日、2015年3月期連結業績が6年ぶりの営業減益だったと発表した。14年暦年に軽自動車販売台数でダイハツ工業を抑え8年ぶりに首位を奪還したが、薄利の乱売競争に陥った。それでも鈴木修会長兼社長はシェアにこだわる。少子化や増税で縮小する市場で勝ち抜いてこそ成長できる。一時は収益重視を掲げたカリスマ経営者の「原点回帰」だ。

営業利益は1794億円と前の期より4%減った。減益はリーマン・ショックがあった09年3月期以来だ。地域別では特に日本事業が低迷し、減少幅は3割を超した。

シェアで飯は食えない――。これを口癖にしてきた鈴木会長が11日の決算記者会見で力説したのはシェアの重要性だった。「このままでは万年2位になってしまう。売り上げと利益は二兎(と)を追わないといけないとつくづく感じた」

軌道修正は昨夏に始まった。「取りに行け」。鈴木会長は社内にシェア奪還の号令をかけた。暦年でスズキがシェア首位に返り咲くと、年度ではダイハツが抜き返すデッドヒートを演じた。

15年度の軽の販売台数は190万台と前年度比約13%減る見通し。過度のシェア争いは消耗戦になりかねない。自動車販売会社の業界団体が11日発表した4月の車名別新車販売台数(軽含む)は軽の大幅減が目立った。4月から軽自動車税が上がり「3月までの駆け込み需要の反動に加え、増税イメージの影響も大きい」とスズキ系販売会社社長はため息をつく。

いったいなぜ、利益を削ってまでシェア獲得にこだわるのか。

スズキがシェアから距離を置いたのは06年。ダイハツとの過当競争で販売店の収益が悪化していたこともあり、軽の減産と小型車の輸出拡大を打ち出した。利益を出しやすい体質にはなったが、ダイハツとの販売台数の差は拡大。ホンダの巻き返しもあり、シェアは12年度に3割を割った。

2位でよいという空気がじり貧を招き、鈴木会長は「目が死んでいる」と販売担当者を叱るなど危機感を募らせていった。部品メーカーの協力を引き出すのも販売シェアがあってこそだ。調達コスト低減など利益を追うには規模も欠かせない。シェア争いで得るものは多い。今年85歳になり、集大成に入った鈴木会長が至った結論だ。

軽開発では部品メーカーなどと協力しながら「1部品1円運動」と呼ぶ原価低減活動を徹底。工場では生産性向上に向け、従業員の動作の「無駄な一歩」を洗い出す運動まで始めた。高性能な車を安く供給し、シェア回復につなげるためだ。

燃費性能はスズキの「アルト」とダイハツの「ミライース」が競い合った結果、ガソリン1リットルあたり37キロメートルとトヨタ自動車のハイブリッド車「アクア」と同水準まで近づいた。ミニバン並みの広さを持つ軽も登場した。販売面でもダイハツが女性が入りやすいカフェ風の店舗を採用すると、スズキも女性専門の店舗改良部隊を設けて販売店改革に乗り出した。

軽は国内専用車だが、国内の激しい競争で磨いた商品力こそ、海外市場を切り開くためのテコになるとの読みもある。世界では小型車にシフトする「ダウンサイジング」の潮流が強まっている。この流れに乗り成長につなげなければ、身を削った競争の意味も薄れる。

スズキはインドで「ワゴンR」や「アルト」などの軽ベースの小型車を生産し、シェア首位メーカーにまでなった。今後はタイ、インドネシアなど東南アジア市場に低燃費技術などを展開する。ダイハツもインドネシアやマレーシアに軽工場の技術を移植する取り組みなどを加速している。

「攻めと守りの問題で、攻めを怠ったらだめだ。生き残りをかけて戦っていく」と鈴木会長は闘志をむき出しにする。厳しい国内で勝ってこそ、世界競争で生き残れる切符を手にできる。(渡辺直樹、松本正伸)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン