2019年2月18日(月)

「米に貢献」異例のアピール競争 トヨタは5年で1.1兆円投資

2017/1/11 1:00
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【デトロイト=奥平和行、中西豊紀】トランプ次期大統領の就任を控え、米国への貢献度合いを訴えるアピール競争が企業の間で広がっている。トヨタ自動車は9日、米国で今後5年間に100億ドル(約1兆1600億円)を投資する方針を明らかにした。米国での投資や雇用創出を企業に強要するかのようなトランプ氏の言動が企業を異例の対応に走らせている。

「カムリは15年にわたって米国の最量販車だが、その地位に甘んじるわけにはいかない。新型車を送り出し、投資する」。トヨタは9日、中型セダン「カムリ」の全面改良車を発表し、豊田章男社長はこの場で米国への投資を表明した。

新型カムリの発表にあわせた豊田社長の渡米は昨年から決まっていたが、直前に思わぬ横やりが入る。トランプ氏がツイッターを通じてトヨタがメキシコで建設を進めている新工場を批判。米フォード・モーターなどに続いてメキシコ生産がやり玉に挙がり、トヨタ幹部は「手ぶらで行くわけにはいかない」との考えを示した。

1兆円を上回る投資はいわば手土産だ。米国で新型カムリなど新開発・生産手法に基づく製品の立ち上げを多く控えている。新たな投資を追加したわけではないとみられるが、すでに米国へ多大な貢献をしていることを数字で示す考えだ。

9日に始まった2017年の北米国際自動車ショーは自動車業界への介入を続けるトランプ氏の影響を色濃く映したものとなった。

メキシコでの工場新設を撤回した米フォード・モーターのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)は9日、「トランプ氏の政策は米国の製造業にとってよりよい環境を生むものだ」と発言。メキシコの代わりとなるミシガン州への投資は合理的だと強調した。トランプ氏は過去にフォードを「恥知らず」と罵倒している。狙いうちされるよりは寄り添った方が得策との思惑があった。

欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)はミシガン州など米中西部の工場に10億ドルを投じて能力を増強し、2000人を新たに雇用すると発表した。セルジオ・マルキオーネCEOは「ルールが変われば適合していく」と述べ、次期政権に現実的な姿勢で臨む考えを示した。

これらの動きを受けて、9日にはトランプ氏がフォードとFCAに「ありがとう」とツイッターで感謝の意を示したが、トヨタについてはまだ言及していない。トランプ氏が今後、トヨタにどんな反応をするかは未知数だ。

トランプ氏へのアピール競争の流れを作ったのが、昨年12月6日に会談し、4年で500億ドルの投資と5万人の雇用創出を表明したソフトバンクグループの孫正義社長だ。1月9日には中国電子商取引最大手のアリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)会長がトランプ氏と会談。100万人規模の雇用を創出する方針を示した。

10日にはブリヂストンが米工場に1億8000万ドルを追加投資すると発表するなど、幅広い業界に広がっている。

トランプ氏が納得する筋書きでなければ批判の矛が収まらない――。割り切りと苦渋が交差する各社トップの言動は、不透明感を増す米産業政策の写し絵ともいえる。

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