2017年11月23日(木)

東芝、皮肉な半導体収益依存 売却「速やかに契約」

2017/8/10 16:43
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 東芝が10日発表した2017年4~6月期の連結決算で、売却手続き中の半導体メモリー事業の営業利益が前年同期比5倍の903億円と全社利益(967億円)の大部分を占めた。好調なメモリー市況に支えられた形で、同事業に依存した収益構造が浮き彫りになった。債務超過解消のためにメモリー事業を手放せば、東芝全社としての稼ぎ頭を失うという皮肉な構図となっている。

■メモリー需要は旺盛

 「メモリー事業の営業利益率が35%となったことを主因として第1四半期の過去最高益を達成した」。同日の記者会見で平田政善最高財務責任者(CFO)は誇らしげに語った。部門間の相殺などを除いた単純計算では、売上高で全体の23%のメモリー事業が全社営業利益の93%を稼ぎ出した。期末に向けて利益が増える社会インフラ事業などは4~6月期が低調という季節要因はあるものの、財務基盤の脆弱な東芝を支える収益事業はメモリー以外に見当たらない状態だ。

 同事業の営業利益率35%は13年ぶりの水準。スマートフォン(スマホ)やサーバー向けに需要が旺盛で年間の利益水準は安定する見込み。東芝は18年3月期の営業利益で前期比2倍の3712億円(営業利益率32%)を計画している。

 メモリー大手5社は軒並み高い利益水準を維持している。韓国のサムスン電子やSKハイニックスは45%の営業利益率を記録。各社に高収益をもたらすメモリー市況は、売却手続き中の「東芝メモリ」の事業価値を高めるはずだった。

 しかし売却手続きは6月21日に優先交渉先を決めてから膠着状態が続いている。10日の記者会見でも綱川智社長は「可及的速やかに最終契約を結ぶために最善を尽くす」と繰り返すだけで、最終決着に向けてほとんど進展がないことを印象づけた。

 優先交渉先に選んだ産業革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタル、韓国のメモリー大手であるSKハイニックスで構成する「日米韓連合」に加え、協業先で他社への売却に反対する米ウエスタンデジタル(WD)と米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の陣営、そして台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の3陣営と交渉を進めている。

 だが売却交渉を巡り訴訟を抱えるWDとの調整は進まず、訴訟リスクを避けたい日米韓連合との交渉は難航。WD陣営とも折り合えない状態だ。鴻海への売却は、メモリー技術の流出を避けたい日本政府の意向で難しく、身動きがとれない状態に陥っている。

■交渉迷走よそにフル稼働

 売却先決定の後に控える各国の独占禁止法の審査には約9カ月かかるとされる。綱川社長も「独占禁止法審査を考えると容易ではない」と認めており、当初計画の5月から決定はずれ込んで「時間切れ」のタイミングを迎えつつある。

 それでも主力拠点の四日市工場(三重県四日市市)はフル稼働を続け、利益の源泉となるシリコンウエハーは次々と出荷されている。7月には四日市工場の新製造棟への設備投資計画も発表し、売却交渉の迷走をよそに活発な事業活動は続いている。綱川社長は売却撤回の可能性について「考えていない」と発言した。しかし方向性が定まらないまま、売却表明から半年が過ぎようとしている。(細川幸太郎)

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