2018年1月23日(火)

国際化したけど数字は…武田・長谷川会長、最後の決算

2017/5/10 15:59
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 武田薬品工業は10日、2017年3月期の連結業績を発表した。14年間経営トップを担い6月に退任する長谷川閑史会長にとっては最後の決算発表となる。在任中、海外の売上高や従業員数を2倍超に拡大。最優先課題と位置づけたグローバル化は形の上では達成したが、肝心の利益は激減した。グローバル企業への脱皮を目指しもがく武田に処方箋はあるのか。

■利益はピークの3分の1

 東京都中央区日本橋本町。競合他社の本社が立ち並ぶ一画で、武田の東京本社ビルの建設が進んでいる。設備投資額は約600億円。2018年春の完成予定だ。建設にあたり、隣接する神社から空中権を取得。「結果的に」(関係者)、近隣にあるアステラス製薬の本社ビルよりも高くなった。ただ、業績はそのアステラスを大きく下回っている。

 長谷川氏が社長に就いた04年3月期、武田の最終利益は2853億円。08年3月期には長谷川氏在任中としてはピーク(3555億円)を達成した。ところが、武田が10日発表した17年3月期決算では、最終利益が前の期比43.4%増の1149億円と、ピーク時の3分の1にとどまった。ライバルのアステラス製薬(17年3月期は2187億円)にまで大きな差をつけられたままだ。

 長谷川氏が進めたグローバル化の成果は見え始めてはいる。就任時とくらべ、海外売上高は2.3倍の1兆700億円(全売上高の60%超)に拡大。海外従業員数も4.1倍の2万700人(全従業員の70%弱)と大幅に増えた。米ミレニアム・ファーマシューティカルズとスイスのナイコメッドを計2兆円で買収したことが大きく影響した。

■日本人社長へのノスタルジー

 外国人のクリストフ・ウェバー氏を自身の後継社長に指名したことをきっかけに、研究開発部門トップのアンドリュー・プランプ氏ら、幹部への外国人の登用も進んだ。6月以降の新体制では4人いる社内取締役のうち3人が、14人の執行役員クラスのうち3分の2が、それぞれ外国人となる。

 グローバル化へのかじを一気に切った武田。その大きな役割を担ったのが長谷川氏であることは間違いない。ただ、研究開発の中心的な役割を果たした日本人幹部らが流出するなど副作用も頭をもたげる。外国人幹部の高額な報酬が日本人社員の士気に影響しているとの指摘もある。

 そんな状況下、競合他社やOBの間で「あの人が社長になっていれば状況は違ったかもしれない」といった言説がささやかれ始めた。

 奈良井佳洋氏。長谷川氏と社長の座を争い、創業家出身の武田国男氏の後継候補の筆頭格とみられていたこともある人物だ。社長レースの軍配が長谷川氏にあがった直後、グループ会社の社長に転じ、今年1月まで富山県を地盤にする中堅製薬会社、ダイトの会長として経営に携わっていた。

 奈良井氏については「非常に厳しい人でとても怖かった」(武田OB)との声がある一方、国内営業の経験が長いこともあり「チームワークを重視するなど、日本的な経営を重視した人だ」(別の武田OB)との評価が大勢を占める。

 米国在任中、休日には米国人社員らと近くの山の中に繰り出し、おもちゃの銃を使った遊びに興じたり、家族を伴った食事会を積極的に開催したりして、チームワーク醸成に腐心していたという。ダイトに移ってからも、全員参加の社員旅行を開催する社風を大切にしていたという。日本人離れしたドライな感覚を持ち「宇宙人」とまで評された長谷川氏に対し、日本的な経営を体現したのが奈良井氏というわけだ。

 もし、武田が国内の盟主の地位に安住しグローバル化を避けていたら。日本人社長をトップに頂いていたら。歴史に「もし」は通用しないが、長谷川氏が推し進めたグローバル化が結果に結びついているとは言いがたいことから、関係者の間でそんなノスタルジーが流行したのかもしれない。

 グローバル企業への転身をはかるための生みの苦しみなのか。それとも、長く続く低迷の始まりなのか。グローバルで通用する新薬の開発、買収企業のガバナンス、外国人と日本人の融和。長谷川氏の傘がなくなったウェバー社長は今後、どのような経営で山積する課題に取り組むのだろうか。

(戸田健太郎)

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