LINE2年越しの上場 日米同時、世界の巨人に挑む
東京証券取引所は10日、対話アプリのLINE(東京・渋谷)が7月15日に上場すると発表した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)にも同時に上場する。検討を始めてから2年。ようやくこぎ着けた。普及していない米国でも上場するのは米フェイスブックといった世界の巨人に挑む意思の表れ。「小兵」が世界を相手にどう戦うのか。

時価総額2年で4割目減り
上場の検討を本格的に始めたのが2014年。経営陣の中でも東証だけ、米国だけ、日米同時と意見が分かれた。結局、「世界チャレンジを忘れていないという決意表明」(幹部)として、日本初となる東証とNYSEの同時上場を目指す方向が固まった。
今回、公募増資で調達する約1000億円のうち海外は63%で、日本は37%と海外を多くした。
ここまでには曲折があった。上場時の時価総額は6000億円。14年時点では1兆円との声も出ていた。当時はSNS銘柄に過熱感があった。収益が不安定だったこともあり何度か延期を余儀なくされた。その間「国内市場の拡大余地が小さくなり、海外展開はライバルが多く成功は未知数」(市場関係者)との見方が広がり評価を下げた。
広がるフェイスブックとの差
時価総額36兆円のフェイスブックや23兆円の騰訊控股(テンセント)など世界の「巨人」との差は広がった。世界の利用者数もLINEが2億1800万人なのに対しフェイスブックは16億5000万人、テンセントの微信(ウィーチャット)は7億6000万人だ。
上場を機に本格的に世界を目指す。だが、巨人たちが巨額のM&A(合併・買収)を繰り広げる世界のネット業界で、いきなり小兵が真っ向勝負するわけではない。
公募増資で調達する約1000億円は、電子商取引(EC)やコンテンツといった分野で、有望なベンチャーをM&Aするためにも活用する。
身の丈に合わせて地域を絞り込む。これまで欧米ではライバルの牙城を崩せなかった。日本のほか利用者が多い台湾、タイ、インドネシアにまずは集中し、成長市場の獲得を目指す。渋滞がひどく外食をしたがらない人が多いタイでは1万の飲食店からスマホで注文できる宅配サービスがヒットした。こうしたノウハウを他の国へ展開する。
新しい試みとして今年から始めるのが「スマートポータル」構想だ。対話アプリを起点に通話やニュースにとどまらず、決済や動画といった多様なサービスに結びつける。スマホの玄関口になろうという考えだ。
使われるサービスが増えれば、広告を載せる場所も増える。今月から利用者の嗜好にあった広告を自動配信するサービスも始めた。テンセントはゲーム、フェイスブックは広告と、収益に偏りが大きい。新サービスの拡大と広告収入の増加による多様な収益源はLINEの強みになる。
ようやくこぎ着けた上場。これはあくまでもスタートラインだ。LINEでなければというサービスを世界で生み出していけるかが勝負を分ける。(堤正治、井川遼)