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神戸製鋼、脱・鉄鋼依存めざすワケ アルミへ積極投資

神戸製鋼所は10日、日本と韓国のアルミ事業に550億円を投資すると発表した。韓国ではライバルのアルミ圧延世界2位の米ノベリスの工場に出資し、日本では栃木県の工場に新たな生産設備を設ける。神鋼は4月に130億円を投じてスウェーデンのプレス装置メーカーの買収を決めたばかり。矢継ぎ早の積極投資には、もはや鉄鋼メーカーではなく、「鉄鋼も手掛ける」複合企業の地位を固める決意が見える。

神鋼の金子明副社長は10日の記者会見で、「自動車の軽量化ニーズの加速に対応することが成長のカギになる」と強調した。アルミの比重は鉄の約3分の1で、車体の軽量化につながる。自動車用素材は引き続き鉄が中心ではあるが、アルミや樹脂への置き換えも進んでおり、神鋼は今後もアルミ事業への積極投資を続ける方針も示した。

神鋼の粗鋼生産量は年700万トン台。国内鉄鋼メーカーの再編を経て4500万トンの新日鉄住金や3000万トンのJFEスチールに比べ大きく見劣りする。鉄鋼など素材は規模の経済が働きやすく、生産規模の大きさが競争優位に働く。それでも神鋼は鉄鋼各社からのラブコールには背を向け、頑固なまでに単独路線を貫いてきた。

「鉄とアルミを持っててどんなシナジーがあるのか」――。神鋼は当たり前すぎるこの問いにこれまで明確に答えることができていなかった。神鋼のセグメントは8つ。鉄鋼、アルミ・銅に加え、建設機械、電力などを抱え、日本の上場企業でもかなり多い。鉄鋼もアルミも再編で巨大化した業界トップ企業から引き離され「身動きが取れず再編に出遅れた銘柄」(大手証券会社)との見方も強かった。

しかし、世界的に年々厳しくなる環境規制で自動車におけるアルミの採用が急速に広がってきた。一方で、鉄は中国メーカーの大増産のあおりで収益力が低下し、素材間競争でも徐々にシェアを奪われている。神鋼は鉄やアルミ、銅などの幅広い素材を持ち、溶接技術にも強みを持つ複合素材企業としてのメリットを発揮できる局面がようやくやってきた。

そうした中での鉄鋼以外への積極投資。4月に発表した機械部門のスウェーデン企業への投資は同社として過去最大規模。今回の550億円の投資も国内アルミメーカーの加工事業として最大級となる。既にグループ全体の売上高に占める鉄鋼事業の比率は4割を切り、経常利益ベースでは3割(18年3月期見通し)に低下する。

神鋼は鉄鋼事業を中心とする国内外のライバルメーカーとは完全に違った道を歩んでいる。そしてその流れをさらに前に進めることが生き残りの道と判断している。今回のアルミ事業への思い切った戦略投資で「鉄鋼専業メーカーからの究極の買収防衛策になる」(神鋼関係者)。意図せずとも意外な効果も見込める。

東芝といった複合企業では、各事業のトップが自分の事業を優先しがちになる。ある素材業界トップは神鋼を「縦のラインの意識が強すぎてグループの連携が必ずしもうまくいっていない」と指摘する。全体最適をめざし、経営トップが全社横断的に目配りする姿勢がこれまで以上に求められそうだ。(大西智也、安原和枝)

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