松坂屋、名古屋店にヨドバシ 再生へ脱・百貨店

2015/6/10付
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J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は9日、松坂屋名古屋店(名古屋市中区栄)にヨドバシカメラを誘致すると発表した。店舗の中に家電量販店を置き、百貨店を訪れる機会が少ない若者や男性といった新しい客層を掘り起こす。大丸松坂屋は業態の垣根を越える「脱百貨店」戦略を全国の主要店で進め、長期での成長を目指す考え。同社最大の旗艦店である名古屋の試みは高島屋に奪われた地域一番店の座を奪回する狙いもある。

ヨドバシカメラが入る松坂屋名古屋店南館(写真左、右は本館)

ヨドバシカメラが入る松坂屋名古屋店南館(写真左、右は本館)

ヨドバシは松坂屋名古屋店の南館4~6階で11月に営業を始める。ヨドバシが東海地方に進出するのは初めて。営業面積は8000平方メートル強と、大阪・梅田(家電で約3万平方メートル)や東京・秋葉原(約2万4千平方メートル)の店の3分の1程度だが、品ぞろえは368万点と充実させる。

「サービスや接客のレベルが高い」。同日に記者説明会を開いた松坂屋の加藤俊樹店長はヨドバシの魅力を強調した。なかでも、お客の要望に合わせて異なる売り場の商品をまとめて売り込むヨドバシの「コンシェルジェ」サービスが、誘致の決め手となったようだ。

例えば、松坂屋とヨドバシが一体となって、家具やインテリアと家電を組み合わせた生活スタイルを総合提案することを期待する。加藤店長は「松坂屋に来たことがない客層も取り込みたい」と意気込む。

■遺恨の地で戦う

松坂屋名古屋店はJフロントのなかで最も売上高の大きい旗艦店であるうえ、松坂屋の本拠地でもある象徴的な存在。そこに、業態の異なる家電量販店を誘致した背景には、2つの理由がある。

ひとつは、地域ナンバーワンの座をかけた戦いだ。松坂屋名古屋店は2014年度に初めて、名古屋駅直結の百貨店「ジェイアール名古屋高島屋」に売上高で抜かれた。この場所の隣接ビルには最近までヨドバシが出店を計画していたが、最終的にはビックカメラが出店を決めた遺恨がある。

ヨドバシにとっても「名古屋は消費者の購買意欲が高い重点地域」(藤沢昭和社長)。名古屋駅前への開業計画を撤回した後も、この位置付けは変えず、出店にこだわった。

もうひとつは、国内の百貨店を取り巻く環境だ。消費者の低価格志向や、衣料品専門店とネット通販などに顧客が流れ、百貨店業界の売上高はピーク時の6割程度の年間6兆円強まで落ち込んだ。足元の各社の売上高は、インバウンドや富裕層消費の拡大で堅調そうだが、少子高齢化の進展で長期的には経営環境が厳しくなる。

■新モデル構築

この状況を打開するため、Jフロントの奥田務相談役が社長時代にほかの百貨店に先駆けて取り入れたのが「マルチリテーラー戦略」。パルコやプラザをグループ化したうえで、キャラクターグッズ専門店やファストファッションなど業態の異なる流通業者を入店させる戦略だ。

再開発中の松坂屋銀座店跡(東京・中央)は「松坂屋」の看板がつかない商業施設とする。また、松坂屋上野店(東京・台東)南館の建て替えでは中核テナントをパルコにするなど、新たな百貨店モデルの構築を進めている。今回のヨドバシ出店はそのハイライトとなる。

家電量販店は百貨店の立地を収益拡大の活路のひとつととらえる。地方郊外店主体のヤマダ電機が地方店を整理して都市部の駅前型重視の姿勢に転じたなか、有望な立地は奪い合いが激しさを増す。百貨店側にも過去に切り捨てた家電販売のニーズは根強く、さらなる合従連衡を誘発しそうだ。

(豊田健一郎、大本幸宏)

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