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ジャパンディスプレイ、背水の綱渡り経営
有機EL出遅れ

2016/8/9 17:57
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 ジャパンディスプレイ(JDI)の経営が綱渡りの状況だ。9日発表した2016年4~6月期の連結最終損益は117億円の赤字。成長資金をひねり出せず、筆頭株主の官民ファンド、産業革新機構に金融支援を要請せざるを得なくなった。銀行もまじえた交渉が始まるが、この窮余の一策だけで解決するほどJDIの苦境は甘くない。

決算発表するジャパンディスプレイの本間会長(右)と有賀社長(9日午後、東証)
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決算発表するジャパンディスプレイの本間会長(右)と有賀社長(9日午後、東証)

■資金繰りに窮する

 「事業構造の変革を急がなければならない」。9日の記者会見の冒頭。本間充会長兼最高経営責任者(CEO)は神妙な面持ちで、JDIが置かれた状況を説明し、「革新機構から全面的に支援するとの話をいただいている。今後の資金繰りについては安心してほしい」と強調した。

 本間CEOがこう釈明したのは、一時、JDIが資金繰りに窮したからだ。今年明け以降、最大顧客である米アップルのスマートフォン(スマホ)販売が低調で、中国のスマホ市場も振るわない。スマホ向けが8割を占めるJDIの手元資金は目減りしていった。新設した白山工場(石川県白山市)の製造設備の支払いのために取引銀行から5月と6月にそれぞれ300億円、7月に150億円を借り入れる事態となったのだ。

 これらの短期借入金は顧客からの入金があり次第、返済しており、今も実質無借金だ。しかし、このままでは今後、機動的かつ十分な投資ができない。金融支援要請はこうした危機感から生じた。資本注入、融資、債務保証など、取り得る策はいくつかあるが、革新機構の意向や支援の枠組みはまだ定まっていない。

 実は、みずほ銀行や三井住友銀行などがJDIに設定している600億円のコミットメントライン(緊急融資枠)は契約期限が迫っている。そのまま更新するのか、枠組みを変えるのか、それともいったん打ち切るのか。「いずれにせよ革新機構の出方にかかっている」と、ある金融関係者は解説する。「債務保証ではなく、革新機構が真水のカネを資本に入れるのが本筋だろう」

 本間CEOは支援スキームに関して「多くの株主の影響は最小限にしたい」と語るにとどめ、第三者割当増資の可能性に関しては「何とも言えない。ノーコメントだ」という姿勢を貫いた。

■主導権争いで時間を空費

 今後の交渉は曲折が予想されるが、なぜ新たな支援を仰がなければならない事態に陥ったのか。その根源をJDI発足時までたどると、3つの原因が浮かび上がってくる。

 ひとつ目は不毛な主導権争いだ。

 JDIは日立製作所、東芝、ソニーの3社が中小型液晶パネル事業を統合して12年4月に発足した。高い技術力を誇りながら、資金力のある韓国勢に追い抜かれたテレビ用液晶の轍(てつ)を踏まないよう、競争力があるうちに中小型液晶で規模を追求する狙いだった。再編を主導した革新機構が2000億円を出資し、実際、JDIは中小型液晶で世界首位に立った。

 だが、技術と人材の融合はなかなか進まなかった。そもそも統合合意までに1年半も費やしている。革新機構は10年2月に交渉を持ちかけたが、3社とも自社技術にこだわり、新工場の立地選定でもめ続けた。日立が一時、鴻海(ホンハイ)精密工業との提携を模索し、交渉に遅れて加わったことも事態を複雑にした。

 最後は交渉決裂を恐れた革新機構が3社を説得し、工場立地や人員計画、トップ人事が決まらない状態で見切り発車的に統合合意を11年8月末に発表。しこりは長く残った。主導権争いによる時間の空費は中国企業の猛追を許す要因にもなった。

 2つ目は技術動向を見誤ったことだ。有機EL市場の立ち上がりを軽んじていた。

 JDI発足前から韓国サムスン電子(現サムスンディスプレー)は自社のスマホ向けを中心に有機ELパネルを量産していた。JDIの経営陣も有機EL量産を視野に入れているとしていたが、需要が立ち上がるのはもっと先だと踏んでいた。

■読めなかったアップルの戦略

 ところが事態は急転する。アップルが17年以降に発売するスマホに有機ELを採用する方針を固めたのだ。JDIは17年春にも千葉県の工場で有機ELの試作ラインを動かす予定だが、アップルへの供給は間に合わない。主にサムスンが供給する見通しだ。

 ある業界関係者は嘆く。「これまでの電機産業は日本が先行して、韓国が追いついてくる構図だったが、有機ELはまったく逆。先行するサムスンとは絶望的な格差がある」。英調査会社IHSテクノロジーによると、15年の中小型液晶の出荷額シェアはJDIがトップを維持するが、有機ELを含めるとサムスンに逆転された。

 中国の液晶パネルメーカーも有機ELを猛スピードで開発している。中国最大手の京東方科技集団(BOE)や天馬微電子が早い段階で量産に乗り出し、有機ELシフトを進める中国スマホメーカーが積極採用すれば、JDIが入り込む余地は一段と狭まる。

 JDIは18年度上期に有機ELの量産開始を目指している。そのために必要な資金は、有賀修二社長によると「1000億円を下回らない」。革新機構の金融支援だけでは賄えない金額だ。顧客からの支援も仰ぐ考えだが、了解を取り付けるのは簡単ではない。

■「日の丸連合」へのこだわり

 3つ目は「日の丸連合」への執着だ。経済産業省と革新機構は国内の液晶産業をシャープとJDIの2社に集約し、世界で戦わせようとした。しかし、この執着が意思決定の遅れを招き、大胆な投資に踏み切れない状況を作り出した。

 一方、独立路線にこだわったシャープは坂道を転げるように業績が悪化。革新機構はシャープ買収を検討し、JDIと統合させる構想を練ったが、最終的には鴻海との争奪戦に敗れた。企業規模を大きくして競争力を引き上げる戦略も崩れてしまった。

 産業革新機構はいずれ「出口戦略」を描かなければならない。「革新機構の持ち株は海外企業に売るしかないだろう」との見方が増えつつある。

 JDIは今後、「車載・ノンモバイル」分野の比率を引き上げる考えだが、この分野は顧客開拓に時間がかかる。記者会見では開発中の薄型・高精細の液晶パネルで挽回を期す考えも示したが、浮き沈みの激しい市場に翻弄されてきただけに、多くのステークホルダーはJDI経営陣の説明をうのみにできないだろう。

 JDIの経営は革新機構への金融支援要請で新たな段階に突入したが、打開策は簡単には見つからない。企業体力が時間とともに消耗していく懸念が強まっている。

(鷺森弘)


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