自動車だけじゃないボッシュ 日本でAI活用農業システム

2017/6/8 14:41
保存
共有
印刷
その他

自動車部品大手、独ボッシュの日本法人は8日、AI(人工知能)を利用して作物の病害を予測する農業向けのサービスを始めると発表した。ビニールハウス内の温度や二酸化炭素(CO2)の量などの情報をもとに、AIが病害の発生リスクを算出。農家は適切なタイミングで予防薬をまけるようになるという。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」とAIを商機とにらむボッシュ。新たな収益源をはぐくむ活動が本格化する。

センサーの情報を集約し、病害のリスクを算出する(東京・渋谷)

■農作業のリスク、52時間先まで予測

ボッシュが年内に日本で始める農業向けサービスは「プランテクト」。温度や湿度、日射量などを測る3つのセンサーをビニールハウス内に設置する。それぞれが得た情報を通信機を介してボッシュのクラウドに集約。クラウド内のAIには病害の発生率を計算するアルゴリズムが組み込まれている。

AIで算出した病害のリスクはパソコンやスマートフォン(スマホ)から確認できる。低、中、高の3段階でリスクを表示し、最大で52時間先まで予測する。適切なタイミングで予防薬を散布して収穫量を増やせるとして、農家に提案する。

初期費用は無料。月あたりの支払額は病害リスクの予測機能を入れて税別8330円。リスクを算出する機能は現状でトマトのみに対応している。初年度で数百台の受注を目指す。同日の記者会見で日本法人のウド・ヴォルツ社長は「AIの開発やIoTの導入は自動車や製造業向け以外でも進めていく」と強調した。

■微細センサー軸に「雲」から「霧」に

日本ではデンソーなどと競う自動車部品の大手として知られるボッシュだが、世界では冷蔵庫などの白物家電、電動工具や産業機器の事業を展開する。同社の肝は自動車部品や家電、スマートフォン(スマホ)に組み込まれる微細センサーだ。これらがIoT時代になれば飛躍的にセンサーの台数が増え、データを集める拠点数は拡大する。収益機会が広がるなか、日本で始める農業向けシステムは答えの一つとなる。

あとは集まったデータをどう判断するか。ボッシュは今年1月、AI分野に5カ年で3億ユーロ(約370億円)を投じる計画を発表済み。ドイツのほか、米シリコンバレーとインド・バンガロールに研究センターを新設し、2021年には部品や家電など全体の売上高の10%をAIを備えた製品にする方針だ。

サービスの基盤を提供する企業という顔も持ち始めた。昨年からクラウドコンピューティングのサービスにも乗り出し、IoTに関連するデータをやりとりするサービスまで一括して取り扱う。絶えずシリコンバレーなどの最新情報を仕入れ、既存事業との相乗効果を狙うボッシュらしい。

今年から力を入れるのが、米国で始まった概念である「フォグコンピューティング」だ。データを集める現場とクラウド空間をつなぐ手法と異なり、データを集めるその現場で作業を判断する仕組み。霧のように利用者の目の届く距離で処理し、IoTとの親和性が高いとされる。膨大なデータは不要で、オン・オフなど簡単な判断は自律分散型のフォグで対応してしまう。「これからはクラウド、フォグの両にらみだ」と同社のソフトウエア子会社幹部は語る。

ボッシュは各地でハードにとどまらない基盤づくりにも関与する。米IBMなどともIoTをにらんだ提携の輪を広げながら事業モデルを変えつつある。農業進出の先に耕そうとしている事業のフィールドは広い。

(河野真央、加藤貴行)

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]