最高益に挑む東レ、炭素繊維の回復に時間

2017/8/7 17:37
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東レが7日発表した2017年4~6月期連結決算は、純利益が前年同期比12%減の260億円だった。過去最高益を掲げた18年3月期の通期見通しは据え置いたが、雲行きが怪しいのが炭素繊維複合材事業。風力発電設備など汎用品で価格の下げ圧力にさらされているうえ、航空機向けは在庫がはけるまでなお時間がかかる。フィルム、電子材料など自慢の化成品群が不振の炭素繊維を支えるが、過去最高益達成は綱渡りとなりそうだ。

「炭素繊維は価格競争が激しくなっている」「原料価格の上昇もあり厳しい」。7日の決算説明会で日覚昭広社長は時折、険しい表情をみせた。

東レの4~6月の5つのセグメント別営業利益のうち、減益だったのは繊維と炭素繊維複合材料。ただ、繊維が1%減だったのに対し炭素繊維複合材料は約42%のマイナスと足を引っ張った。東レは期初計画から落ち込みを予想していたが、過去最高益達成に向け順調とはいえないスタートとなった。理由は2つある。

1つは汎用品の採算悪化だ。米子会社ゾルテックは風力発電設備など産業用の低価格品を得意としており、メキシコとハンガリーの工場はフル稼働だが、販売価格が下落。繊維原料のアクリロニトリルの価格上昇にも見舞われたことで収益が圧迫され、これだけで25億円の減益となった。

もう一つは米ボーイングの中大型機「787」に供給する高機能品の出荷停滞がある。

ボーイングはここ1~2年、コスト削減を狙って炭素繊維製部品のサプライヤーを新興国の調達先を含め相次ぎ変更。それに合わせ東レも日米の工場から供給先を広げていたが、「モノの流れや在庫などサプライチェーンの実態が見えていなかった」(東レコンポジットマテリアルズアメリカの大西盛行社長)。

日米では在庫が膨らみこの1~3月から生産能力比2割の減産を強化。4月からは1割減に緩め、7~9月からようやくフル稼働に入る計画だが、日覚社長は「10月に在庫調整が完了するかどうか慎重にみている」と話した。

19~20年にかけて「787」の月産機数は12から14機に引き上げられ、19年からは次期大型機「777X」向けの量産も本格的に始まるとあって先行きは明るい。ただ、汎用炭素繊維の市況を含め成長が踊り場に入り、今期はどこまで減益を耐え忍べるかが課題だ。

他方、繊維に次ぐ営業利益を占めるフィルムや電池材料など機能化成品は好調。フィルムのなかでも特にリチウムイオン電池セパレーター(絶縁材)は日韓で増産に次ぐ増産で収益を押し上げた。

電気自動車(EV)など車載用電池の需要は右肩上がりで、20年の生産能力を19億5000万平方メートルと3倍に増やす。リチウムイオン電池世界大手の韓国LG化学や同サムスンSDIが今年までに東欧に相次ぎ工場を完工。この動きに追随し「地産地消を進め、欧州だけでなく米国への進出も検討する」(日覚社長)という。

ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでは世界で東レと帝人しか作れないとされる積層セラミックコンデンサー用も「需要をまかないきれない」(井上治常務取締役)といい、増産に入る。利益率が高い有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料も収益の下支え役となっている。

一部の化成品は中国メーカーとの価格競争が過熱しており収益を圧迫しているが、強度や耐熱性など高機能品は一日の長がある。炭素繊維が次の成長に向け身をかがめるなか、こうした高付加価値材料の面々がどこまで健闘するかが東レの過去最高益の行方を決める。

(上阪欣史)

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