中国アリババの15年3月期、営業益7%減 上場後初の決算
純利益4%増、売上高は45%増
【上海=小高航】中国の電子商取引最大手、アリババ集団(浙江省)が7日発表した2015年3月期決算は、本業のもうけを表す営業利益が231億元(約4500億円)と前の期比7%減少した。ライバルとの競争激化を背景とする販売コストの増加が利益を圧迫した。同社は経営陣も刷新し、海外展開など成長戦略を模索する。
同日、張勇・最高執行責任者(COO=43)が最高経営責任者(CEO)に昇格すると発表した。創業者のジャック・マー(馬雲)会長は「張氏は(海外展開など)次のステージに進むアリババを率いるのに最適」と話した。
今回は昨年9月に米株式市場に上場してから初の通期決算発表だ。売上高はスマートフォン(スマホ)経由でのネット通販事業の拡大を原動力に前の期比45%増と大きく伸びたが、営業利益は逆に7%減った。ライバルとの競争を背景に販売促進費が膨らんだ。投資収益などで純利益は4%増えたが、かつての急成長イメージは薄れている。
足元の株価も低迷が続く。同社の株価は14年11月に約119ドルをつけたものの、最近は80ドル前後で推移する。投資家の懸念は大きくいって(1)ライバルによる「アリババ包囲網」(2)海外など新規分野の開拓遅れ(3)模造品問題の3つがある。
若者を中心に年50兆円規模に膨らんだネット通販市場は有望分野。6割以上の圧倒的シェアを握るアリババの牙城を崩そうと、ライバル各社は躍起だ。ネット通販で中国2位の京東集団は昨春、騰訊控股(テンセント)と資本・業務提携した。テンセントの人気チャットアプリ「微信」が抱える4億人の利用者を京東のネット通販に誘導する狙い。伊藤忠商事も先月、タイ財閥などと組んで参入した。
アリババは中国での競争激化を見越し、インドやシンガポールなど海外展開を加速する。ただ14年10~12月期の海外売上高は約18億元。全体に占める比率は7%弱と前年同期から増えず、海外事業の育成は思うように進んでいない。
模造品対策も急務だ。上海市で働く30歳代の女性会社員は「ブランド品などは偽物が多いので(アリババは)使わない」と打ち明ける。所得水準の向上に伴い消費者の目も肥えており「粗悪品が多い」という批判は強まっている。アリババは模造品対策を急ぐが、コスト増や売り上げ減を招く可能性もあり、痛しかゆしだ。
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