百貨店、大量閉鎖時代に インバウンド失速で

2016/9/7 21:19
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百貨店が大量閉鎖時代に突入した。三越伊勢丹ホールディングスは7日、傘下の三越伊勢丹が運営する三越千葉店(千葉市)の営業を2017年3月20日に終了すると発表。頼みの綱だったインバウンド(訪日外国人)需要は失速し、競合企業も店舗合理化を急ぐ。三越伊勢丹は小型店など新業態に活路を見いだそうとしているが、決定打を欠く。構造的な不振から抜け出す明確なシナリオはどこも描けていない。

「違約金を払ってでも出た方がいい」。三越伊勢丹HDの杉江俊彦取締役は7日の記者会見で、三越千葉店を閉じる理由を説明した。実は建物の所有者と三越伊勢丹との賃貸借契約は18年春まで。だが「(他の地方・郊外店と比べても)千葉店は圧倒的に厳しい」ことから、撤退を1年早めざるをえなくなった。

もともと伊勢丹新宿本店(東京・新宿)と三越日本橋本店(東京・中央)、三越銀座店(同)の都内3店舗に収益が偏っていた。千葉店は赤字が続き、3~5年前とみられる前回の賃貸借契約の更新時に閉鎖する選択肢もあった。だが、08年の経営統合後の店舗リストラで収益体質が改善し、まだ千葉店を支えられると判断した。

そこに株価回復とインバウンド需要の追い風が吹く。外国人が高級品を買い占める動きは百貨店市場の落ち込みを食い止めた。富裕層が得意の三越伊勢丹HDは潤い、連結営業利益は14年3月期に過去最高の346億円を記録。16年3月期はそれに次ぐ水準となった。

だが"爆買い"は長く続かなかった。訪日客のリピーターの関心は「モノ」から「コト」に移り、中国政府は4月から海外で購入した高級腕時計、酒、化粧品の関税を大幅に引き上げた。円高に振れたのも響いた。三越伊勢丹HDの16年4~6月期の営業利益はほぼ半減。旗艦店で赤字店を支える体力を失った。

1月には日本空港ビルデングなどと組んで、酒・たばこ税や関税も免除となる「空港型免税店」を三越銀座店8階に開設したが、訪日客の消費行動が急激に変化し、「もはや空港型免税店の集客力は驚異ではない」(百貨店関係者)。インバウンド専用売り場をテコに集客するもくろみはあっけなく崩れた。

アパレル頼みで特色を打ち出しにくい百貨店の構造問題は深刻だ。アパレル会社が疲弊し、杉江取締役は「地方店舗への商品供給が滞っている」と指摘する。千葉店も同様で、アパレル会社が販売員を出せなくなってきたため、自前で販売員をそろえていた。売り上げが減少するなか、コストだけが上昇するいびつな状況は限界に達した。

事情は各社も同じだ。そごう・西武は2月に西武春日部店(埼玉県春日部市)を閉鎖し、17年2月までにさらに4店舗を閉鎖。エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の阪急阪神百貨店は17年7月末に堺市の店舗「堺北花田阪急」を閉める。閉店ドミノは広がる様相を見せる。三越伊勢丹HDにもまだ不振店舗が残る。

打つ手がないわけではない。三越伊勢丹HDは旗艦店依存からの脱却に向け、ショッピングセンターや空港に出店する小型店を現状の100店から18年度までに180店に増やす。ただ、小型店事業の売上高は16年3月期に300億円程度で、全体を押し上げるには力不足。海外戦略も道半ばだ。さまよう老舗の苦境は業界全体の縮図でもある。(豊田健一郎)

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