吉野家HD、増収も人件費上昇で営業減益 - 日本経済新聞
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吉野家HD、増収も人件費上昇で営業減益

吉野家ホールディングスの復活シナリオに黄信号がともっている。7日に発表した2016年3~8月期の連結決算は4期連続で増収を確保したものの、営業利益は9億4500万円と増益予想から一転し、前年同期比2割の減益。新規出店の費用が膨らんだほか、人件費や賃料高で販管費が増えた。なかでも、人手不足を背景に人件費が上昇。利益回復の足かせになりかねない。

時給と採用コスト増で人件費は5%増

主力の牛丼チェーン「吉野家」で復活させた「豚丼」のヒット、うどんの「はなまる」、すしの「京樽」の新規出店……。3~8月期決算が示す吉野家は確実に復活に近づいている。連結売上高は0.5%増の934億円。07年に持ち株会社制に移行して以降で最高だった。

デフレ圧力が強まる中、吉野家HDの完全復活への期待は強いが、「一難去ってまた一難」こそ、今の吉野家を言い表すのにふさわしいかもしれない。価格競争や原材料高を乗り越えてきた後、今度は人手不足の波が待っていたのだ。

確かに、原材料のコストは下がっている。円建ての牛肉の仕入れ価格は2014年をピークに下落。売上高原価率は36.5%と前年同期に比べて2ポイント弱下がった。その半面、販管費は62.5%と2ポイント近く上昇。12年3~8月期以来、4年ぶりの高水準に達した。

主力の吉野家の場合、人件費は148億円と1年前に比べて5%増加。吉野家HDの河村泰貴社長は7日の会見で、「人手不足が厳しく、時給や新規採用のコストが構造的に上がっている」と懸念を示した。

時給20円上昇で、9億円のコスト高

人件費の高騰は、吉野家にとって、これから最大の経営課題の一つになっていくだろう。吉野家HDのグループ全体で働くパートやアルバイトの人数は1万5000人(8時間換算で算出した平均雇用人数)を超える。1人あたりの時給が20円あがっただけで、1年間で9億円程度のコスト高になる計算だ。

リクルートジョブズがまとめた8月の賃金調査によると、首都圏で飲食店やファストフードなどがパート、アルバイトを募集するときの時給は平均1001円と、1年前よりも20円(2%)上がった。全国平均でも921円と上昇基調にある。

吉野家が、手をこまぬいているわけではない。人手不足に対応するため、パートやアルバイトのうち勤続年数が長い人を対象に、転勤のない地域限定の正社員になる制度を9月から始めた。人材の奪い合いとなる中で、まずは経験の長い従業員の流出を防ぐ作戦だ。結果として、従業員の採用や教育にかかるコストを減らせる。

吉野家HDは7日、2017年2月期通期の予想を増収増益に据え置いた。人手不足という難題を乗り越えて、「デフレ強者」の本領を発揮できるか。完全復活へのハードルは低くない。

(富田美緒)

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