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価格・距離・充電設備 EV普及占う新型リーフ

日産自動車は6日、電気自動車(EV)「リーフ」の新型を10月2日に日本で発売すると発表した。1回の充電で走れる距離は先代の4割増の400キロメートルに伸びた。価格は約315万円からで、補助金の分を引くと実質275万円から。環境への関心が特別に高くない「普通の人」でも、購入の選択肢にしそうな水準だ。リーフがEV普及の扉を開くのか。課題は何か。

「技術の粋を集めた。先代のリーフはEV時代の先駆者だったが新型は日産のコアになる商品だ」。ワールドプレミアと銘打った6日午前の発表会で、西川広人社長はこう胸を張った。会場は幕張メッセ(千葉市)。ステージの床や壁面にグラフィックが投映され、青色のライトが飛び交う中に新型リーフが登場。高揚感を誘うロックコンサートのような演出に会場は沸いた。

同分野でライバルの米テスラは7月、量産型EV「モデル3」を発売し話題をさらった。受注は約50万台。これに対し日産は、2010年のリーフ発売から累計28万台を実際に販売。EVの先駆者として市場を切り開いてきたとの自負を持つ。ダニエレ・スキラッチ副社長は同日の発表会で「日産は自動車を84年間造り続けてきたテスラにない強みがある。これからもEVのリーダーだ」と対抗心を隠さなかった。

本気のプレーヤーの増加で、EV普及の機運は高まっている。米ゴールドマン・サックス証券は同日、EVの将来展望のリポートを発表。30年の新車販売に占めるEV比率は8%だが、40年に35%から最大51%になると予想する。

実際の普及のカギを握るのは、価格、航続距離、充電インフラの3点。プラス政策だ。

因数分解してみよう。EVの価格を左右するのは電池。三井物産戦略研究所(東京・千代田)によると、日産がリーフを発売した10年当時は、1キロワット時当たりの単価は10万~20万円だった。いまは2万~3万円に下がり、量産効果などで「今後3~4年で1万円台になるだろう」(三井物産戦略研の西野浩介氏)。航続距離も技術革新により「25年ごろには航続距離が500キロメートルを平均的に超えるようになる」(デロイトトーマツコンサルティングの尾山耕一氏)。

数十分で充電できる急速充電器も増えている。リーフが充電できる日本発の規格「チャデモ」に対応した充電器は世界で1万3800基ある。10年はわずか300基だった。

さらに、世界各地で環境規制の動きも加速している。中国政府は自動車メーカーに対し、一定のEV生産を義務付ける規制を導入する見通し。英仏政府は今年7月、40年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁じる方針を表明した。欧州系コンサルティング会社、ローランド・ベルガー(東京・港)の貝瀬斉パートナーは「EVの普及は親和性の高い自動運転技術やシェアリングの進化が深く関係する」と指摘。道路交通や運輸関連の法制整備もカギとなりそうだ。

これだけを見れば、EVがガソリン車やディーゼル車に取って代わるイメージも浮かぶが、一方で様々な障害物も指摘されている。

まずは素材。リチウムをはじめ電池の原料は価格が上昇傾向だ。ニッケルはフィリピンやマダガスカル、マンガンは中国など産出地域が偏る。コバルトも銅やニッケルの副産物で、将来にわたり安定調達が確実かはわからない。「原料の需給が引き締まり電池の価格は下がらない」(大手商社)との見方も少なくない。

航続距離の伸長も簡単ではない。距離を伸ばすには電池エネルギー密度のアップが必要だが、「電池の寿命を伸ばすことと両立させるのは難しい」(三井物産戦略研)。充放電を繰り返すと、電池が劣化して当初に比べて容量が少なくなる。電池の寿命は、中古車の下取り価格に響く。実際、先代のリーフの初期型は、中古車の販売価格が30万~40万円と安い。日産は新型リーフは電池の寿命を大幅に改善したと説明するが、一般論では電池寿命はEVのアキレスけん。消費者にとって、下取り価格の大幅な目減りは痛い。

急速充電器は設置コストが課題だ。経済産業省によると、日本では出力が50キロワットの充電器なら機器費用は平均240万円、工事費用は230万~280万円する。高速道路のパーキングエリアなどでは送電線などがかさみ工事費が2千万~3千万円に膨らむケースがあるという。「初期費用に補助金を使っても単体で収支が合わない充電器は全国に少なくない」(経産省)。使う側と設置する側の双方にメリットを生む仕組みづくりが欠かせない。

さらに根源的な問いは、消費者が欲しいと思うクルマかどうかだ。コストパフォーマンスには、美しさ、格好良さ、乗ったときの心地よさなど消費者の感性に訴える要素が多分に含まれる。エコのイメージだけではなく、EVならではの静かさや加速性能といった魅力をいかに磨けるかで、普及のスピードと自動車各社の競争力が決まりそうだ。

(藤野逸郎)

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