欧州製薬首位ノバルティスCEO、18年1月末で退任
抗がん剤強化、事業再編を主導
欧州製薬首位のノバルティス(スイス)は4日、ジョセフ・ジメネス最高経営責任者(CEO)が来年1月末で退任すると発表した。ジメネス氏は2010年の就任以降、抗がん剤や遺伝子治療分野などに経営資源を注ぎ、事業再編も主導した。退任は本人からの申し入れという。後任には医薬品開発部門のトップを務めるヴァサント・ナラシンハン氏が就く。

ジメネス氏は米食品大手HJハインツ(現クラフト・ハインツ)などを経て07年にノバルティスに入社し、10年2月に同社の2代目CEOに就いた。1996年に同業の合併で生まれたノバルティスの初代トップ、ダニエル・バセラ氏の後任となる。

ジメネス氏は就任後、大胆な業界再編で事業を多角化したバセラ氏の路線から距離を置いた。バイオ医薬品など先端分野に力を入れ、買収に頼らない事業再編や異業種との提携にも取り組んだ。
14年には英グラクソ・スミスクライン(GSK)との間で、抗がん剤の製品群の買収とワクチン事業の売却を実施。また大衆薬事業はGSKが主導する合弁会社に移管し、医療用医薬品に経営資源を絞る方針を鮮明にした。データを使った医療サービスの開発に向け米グーグルなどIT(情報技術)大手との提携をまとめ、傘下の後発医薬品会社を通じて「バイオ後続品(バイオシミラー)」も強化した。
ジメネス氏の就任からノバルティスの時価総額は約6割増え、1日終値ベースで2100億ドル(23兆1000億円)超に達する。売上高では業界首位の米ファイザーを上回り、同じスイス・バーゼルに本社を置くロシュと時価総額の首位を競う。ジメネス氏は今年1月、収益が低迷する眼科部門アルコンの分離を検討すると表明している。退任までにアルコンの売却や上場まで踏み込むかが焦点になりそうだ。
後任のナラシンハン氏は米マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て05年にノバルティスに入社。開発部門などを歩み、16年2月からグローバルの医薬品開発のトップとチーフ・メディカル・オフィサーに抜てきされた。ジメネス氏の有力な後継者とみられていた。
(加藤貴行)