2019年7月20日(土)

画期的な核酸医薬、スピード承認 神経難病の治療薬

2017/7/3 14:54
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DNAやRNAといった遺伝情報をつかさどる物質を利用する「核酸医薬」で遺伝子に作用する画期的なタイプが3日、厚生労働省で初めて承認された。米バイオジェンの「スピンラザ」は脊髄性筋萎縮症(SMA)と呼ぶ神経難病の初の治療薬となる。核酸医薬は次世代のバイオ医薬品として注目されており、国内外の製薬会社の開発に弾みが付きそうだ。

承認されたバイオジェンの核酸医薬「スピンラザ」(海外パッケージ)

「SMAは悲しい病気だ」。今年1月までバイオジェンの最高経営責任者を務めたジョージ・スキャンゴス氏はこう話す。

米国では、最も重症の「乳児型」SMAの場合、2歳までの間にほとんどが死亡する。日本では人工呼吸器を付けて延命が可能だが、寝たきりの生活となる。病気の原因は遺伝子の異常。筋肉を動かすのに必要なたんぱく質が正常に作られないために生じる。

バイオジェンは、世界で初めてのSMA治療薬としてスピンラザを開発。米国では2016年9月に申請し、わずか3カ月の速さで承認が下りたことが話題となった。日本では16年12月に承認申請が行われ、7カ月での承認となったが、通常よりも大幅に速い。

スピード承認の背景にあるのは、良好な臨床試験の結果だ。スピンラザを投与された試験対象の人たち(群)では51%の患者が運動機能を改善、偽薬の群は0%だった。効果が明白だったため、中間解析のデータで承認申請が認められた。

患者団体の「SMA家族の会」副会長の女性は「早く承認され非常にうれしい。乳児型以外の患者にも早く使えるようになってくれれば」と期待を込める。

バイオジェンにとってスピンラザは特別な意味を持つ。なぜなら創業者の研究が治療薬として結実したからだ。

同社創業者の一人、フィリップ・シャープ氏は、1993年にノーベル賞を受賞している。遺伝子の「スプライシング機構」を発見したためだ。

スプライシングとは、DNAから転写されたRNAがたんぱく質に翻訳される前に、RNAの一部が酵素によって除去される現象のことをいう。

スピンラザは異常のある遺伝子とは別の似たRNAに結合して、ある部分のスプライシングを抑制する。通常このRNAは意味のあるたんぱく質にはならないが、スプライシングが抑制されると筋肉を動かすたんぱく質ができるようになる。

核酸医薬は第一三共大日本住友製薬日東電工など、多くの国内企業が開発に参入している。スピンラザの承認で開発に弾みが付きそうだ。

なお、同薬の薬価は通常なら8月に決まる。米国では1瓶1400万円の値段が付く。最初の1年は8400万円、2年目以降は年4200万円の薬剤費となる。

昨年米国で承認された筋ジストロフィーの核酸医薬「エクソンディス」も、小児で年8400万円の価格設定であり、スピンラザが異常とはいえない。

ただ、高額薬剤が問題となる中、薬価には注目が集まる。病に苦しむ患者がいる中で費用対効果という、ある意味冷徹な物差しをどう当てるか。難問が横たわっている。

(野村和博)

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