ヤマハ、負の遺産処理最終章 「つま恋」営業終了

2016/9/2 21:27
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ヤマハが事業多角化の過程で膨らませた「負の遺産」の処理にようやくメドをつけた。2日、子会社が運営するリゾート施設「ヤマハリゾート つま恋」(静岡県掛川市)の営業を12月25日で終了すると発表。楽器・音響機器を中心にした「音」分野に集中する体制をおよそ15年越しで完成させる。これからは買収戦略もからめた攻めのモードに移行する。

「全国区で名が売れていたのに残念だ」。つま恋営業終了の報が伝わると、掛川市の職員や住民に嘆きの声が広がった。短文投稿サイト「ツイッター」には音楽ファンからも終了を惜しむ声が多く寄せられた。

つま恋は1974年開業。宿泊・運動施設や音楽ホールを備える。75年に吉田拓郎さんとかぐや姫が夜を徹したコンサートを開催。「フォークソングの聖地」として名をはせた。70~80年代には歌手デビューの登竜門「ポピュラーソングコンテスト(ポプコン)」の会場となり、中島みゆきさんなどを輩出した。

つま恋を閉鎖するか、売却するかは未定というが、中田卓也社長の決断には2つの意味がある。

まず、これでリストラがほぼ完遂した。ヤマハは92年に相談役を退くまで40年余りトップに君臨した元社長、川上源一氏が進めた多角化の後遺症に苦しんだ。スポーツ用品、住設機器、半導体生産……。多くがバブル経済の崩壊以降、業績を圧迫。99年3月期は上場来初の連結経常赤字に転落した。つま恋も川上氏が熱をあげた事業だったが、数億円規模の赤字が続いていた。

ヤマハの経営陣は2000年以降、こうした不採算事業から手を引いていった。2期ぶりの黒字転換後の13年に就任した中田社長もその路線を推進した。16年3月期まで3期連続で増収増益を達成。17年3月期の純利益は過去最高の455億円になる見通しだ。

もう1つの意味は「アナウンス効果」だ。ブランド向上に貢献する象徴的な存在に見切りをつければ、本業で攻めの姿勢を強める意志を示せる。

世界の楽器市場は2兆円程度といわれ、今後も飛躍的に伸びない。中田社長は「音響機器を楽器に並ぶ柱に育てる」と言い切る。現在の売上高は楽器の約2800億円に対して、音響機器は1200億円と半分程度。音質にこだわった製品や業務用機器を強化し、成長戦略の柱に据える。

14年にはギター周辺機器や音響機器の米国企業2社を買収したが、今後も買収戦略を強化する。19年3月期までの3年間で買収資金として300億円を見込んでいる。

歌声合成ソフト「ボーカロイド」や耳に聞こえない音波で情報を送るシステムなど「音」に関する周辺技術資産を生かす事業も生み出す。中田社長は「様々な技術を融合させ、わくわくする新事業を追求する」と話す。

つま恋との決別は成長への起爆剤となるのか。「中田改革」の本領はこれから見えてくる。

(新井悠真)

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