2019年6月25日(火)

「値下げの夏」の予感 無印やニトリ、価格戦略見直し

2016/7/1 18:16
保存
共有
印刷
その他

小売り大手の2016年3~5月期決算の発表シーズンが始まった。その業績は個人消費の動向、そして先行きを映し出す鏡だ。政府が旗を振る「脱デフレ」の目標に足並みをそろえるかのように、各社は客単価の引き上げに腐心してきたが、足元では消費者の動向に変化が見えてきた。今夏以降、価格戦略の見直しを迫られるケースが相次ぎそうだ。

■「下期からは、お手ごろ感」

1日に2016年3~5月期の連結決算を発表した良品計画。売上高が前年同期比13%増、営業利益が同20%増と絶好調だった。家具や衣服など単価が高い商品の販売が好調で、国内既存店の客単価は7%上昇して業績を押し上げた。

客単価の上昇は偶然ではない。同社は2013年にカシミヤのセーターを約10年ぶりに投入するなど、素材にこだわった衣料品などを増やし、高付加価値商品の販売を強化してきた。3~5月期も麻を使った衣類などが人気を集めた。

ところが、収益拡大に寄与してきたこの戦略を下期からは見直すという。松崎暁社長は「これまでは品質重視の『こだわりたい値。』と銘打つ商品群の割合を5割まで引き上げる目標を掲げてきた。下期からは、お手ごろ感のある商品群である『ずっと良い値。』の割合を54%にすると明確に打ち出す」と話す。

既存店売上高に変調が表れているわけではない。松崎社長は6月についても「5月までの傾向は変わっていない」とする。好調な販売が続いているにもかかわらず、あえて価格戦略を転換するのは、消費の先行きに不透明感が強まっているからだ。

そんな変化の兆しを示した商品が、昨年末に990円から1200円に値上げした3足セットの靴下。松崎社長は「素材を見直すなど付加価値をあげたものの、販売数量をとれなかった」と話す。そこで、8月からは価格を再び見直し、従来の990円に引き下げる。

■「脱・値上げ」宣言の理由

好業績ながら価格戦略の転換に踏み切るのは、良品計画だけではない。6月30日に16年3~5月期の連結決算を発表したニトリホールディングス(HD)もその1社だ。

ニトリHDは低価格帯の家具が人気を集め、デフレ下で業績を伸ばしてきたが、2015年ごろからは中価格帯の家具に注力している。プランタン銀座(東京・中央)など都市部に出店攻勢をかけ、低価格路線で客を集める「郊外型専門店」というイメージからの脱皮も図ってきた。

しかし、30日の決算発表で似鳥昭雄会長は「今年いっぱいは、あまり消費が盛り上がらないのではないか」との見通しを示した。それだけではない。「今後は何があっても値上げしない」と表明した。なぜ、「脱・値上げ」を宣言できるのか。

理由の一つは、円高進行が仕入れ価格の低下につながるからだ。似鳥会長は会見で、「円高が続くなら、値下げや品質向上を行っていきたい」と発言、値上げの抑制どころか、逆に値下げに踏み込むことすら示唆した。

来週以降はイオンやセブン&アイ・ホールディングスなど、小売り大手の決算が相次ぐ。ニトリHDや良品計画に追随する動きが広がっていくのではないか。「値下げの夏」が来る可能性はある。

(中尚子)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報