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タイ流通大手セントラル、国境付近に重点出店

タイ流通最大手のセントラル・グループが東南アジア諸国連合(ASEAN)内の後発新興国の消費取り込みに本腰を入れ始めた。「CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)」と呼ぶ近接国との国境付近に、大型商業施設を重点的に出店する。2015年末に予定される「ASEAN経済共同体(AEC)」の創設で、ヒト・モノ・カネの往来が活発になるのをにらんだ戦略が動き出す。

経営戦略などについて記者会見するセントラル・グループのトッスCEO(23日、バンコク)=写真 浅原敬一郎

「今年は国境地域に照準を絞る」。23日、バンコクで記者会見したセントラルのトッス・チラティワット最高経営責任者(CEO)は宣言した。

同日発表した15年の事業計画では、370億バーツ(約1330億円)を投資する。食品スーパーや合弁のコンビニエンスストア「サイアム・ファミリーマート」の300店増設などを含むが、投資の多くは百貨店やショッピングセンター(SC)の大型開発向けだ。

「経済回廊」狙う

内訳など詳細は明らかにしていないが、今年は大型の6店を開く予定。市場として突出するバンコク近郊の3店と並んで目を引くのが地方の3店だ。東部ブリラム県とラヨーン県、北西部のターク県に大型店を出す。

カンボジア国境のブリラム県は、インドシナ半島を横切る国際幹線道路「南部経済回廊」の内陸線に比較的近い立地だ。臨海工業地帯を抱えるラヨーン県は、同じく南部経済回廊の湾岸線が通過する。そしてターク県には「東西経済回廊」が走り、ミャンマーとの国境貿易の要衝でもある。

年末のAEC創設を控え、経済回廊は道路の拡幅や橋の建設が進み、出入国や税関手続きも効率化される見通し。ハードとソフトの垣根が低くなれば、モノの輸出入だけでなく「(近隣国からの)買い出しや観光客の需要が見込める」(トッスCEO)と期待する。

セントラルは昨年、ラオス国境のムクダハン県やウドンタニ県、マレーシア国境のソンクラー県、中国南部が近いチェンライ県に大型店を開いている。こうした地域はプラユット暫定政権が目指す国境沿いの経済特区(SEZ)の整備計画地域とも重なっている。

売上高3.2倍

14年のグループ売上高は前年比7%増の2495億バーツに拡大した。最近10年間で3.2倍に膨らみ、15年も15%増の2867億バーツを目指す。グループの不動産開発会社で上場企業のセントラル・パタナは14年1~9月期の連結売上高が前年同期比14%増の177億バーツ、純利益が20%増の55億バーツだった。グループ全体では小売部門が稼ぎ頭だ。

急成長の原動力は積極的な海外での買収だ。欧州では11年にイタリアのリナシェンテ、13年にはデンマークのイルムという老舗百貨店を買収。東南アジアでも昨年、ベトナムやインドネシアに百貨店を開いた。マレーシアでもSC建設が進む。

すでに所得水準が高いマレーシア、消費ブームに沸くインドネシアやベトナムは、現地に直接出店しても十分に集客が見込めるのに対し、CLMの消費市場はまだこれから。いきなり投資するにはリスクが大きい。

ウドンタニ県にオープンした店舗はラオスからの買い出し客でにぎわう

そこで、リスク回避と消費の取り込みを両立する戦略がタイ国内の国境沿いへの出店だった。実際、ウドンタニ県で昨年開いた店舗では、ラオスからの買い出し客でにぎわっているという。

だが、国境に注目しているのは同社だけではない。ライバルの百貨店大手ザ・モール・グループは東北部のナコンラチャシマ県の既存店を大幅に拡張し、ターク県やウドンタニ県への新規出店も検討している。

「チャーン(象)ビール」の酒造大手タイ・ビバレッジを傘下に持つTCCグループも昨年8月、小売り参入の足掛かりとする商業施設「MMメガマーケット」の1号店の開業先にラオス国境のノンカイ県を選んだ。

タイ国内にいながら近隣国の外需を獲得する。製造業が労働集約的な工程に絞って賃金の安い周辺国に工場進出する「タイプラスワン」の、いわば流通業界版といえる。とはいえ、将来の成長性をにらんだ「いいとこ取り」の出店戦略は、足元で早くも過当競争を呼び込みつつある。

(バンコク=高橋徹、小野由香子)

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