2019年2月23日(土)

中国・万達 映画館運営、広がる覇権

2016/7/14 0:30
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中国の不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)が欧州の映画館市場を手に入れる。12日、傘下の米映画館チェーン大手が同業で欧州最大手の英オデオン・アンド・UCIシネマズを総額9億2100万ポンド(約1300億円)で買収すると発表した。実現すれば、欧州、米国、中国にまたがる一大チェーンが誕生することになる。積極的な買収攻勢で世界の映画産業の「川下」を押さえる万達に死角はないのか。

中国国内ではスクリーン数が2千を超える最大手だ(遼寧省大連)

中国国内ではスクリーン数が2千を超える最大手だ(遼寧省大連)

万達が2012年に買収した米映画館チェーン2位のAMCエンターテインメント・ホールディングスが発表した。交渉は3年前から始まっていたが、ドル高・ポンド安が進んだことで一気に合意にこぎつけたという。AMCのアダム・アーロン最高経営責任者(CEO)は「買収でオデオンの業績を大幅に高められる」とコメントした。

中国での商業施設の開発、運営で事業規模を拡大してきた万達。中国経済の減速で不動産市況が不安定となるなか、施設の集客力を高めるために目をつけたのが映画だった。

12年のAMCを皮切りに国内外でM&A(合併・買収)を推進。万達グループとしてはスクリーン数はすでに7500を超え、世界最大手だ。ここに足場のなかった欧州が加わる。米国では3千弱のスクリーン数を展開するカーマイク・シネマズの買収手続きも進めており、合算すれば世界で1万3千弱のスクリーン数を持つ巨大企業の誕生となる。

万達は「ゴジラ」など大衆向け娯楽映画を得意とする米映画制作会社レジェンダリー・エンターテインメントの買収を決めるなど映画制作分野にも触手を伸ばしている。王健林董事長は米ウォルト・ディズニーなど世界6大配給会社が牛耳る映画業界の「独占を崩したい」と語り、「映画王」への野望を隠さない。

ハリウッドなど米映画業界が中国になびいている現状は追い風だ。例えば14年公開の米パラマウント・ピクチャーズの「トランスフォーマー4」。この映画では中国の自動車やパソコン、ヨーグルトなどが次々に登場した。巨額の制作費をまかなうため、中国商品を映し出す見返りに広告料を中国企業から集める手法を取ったためだ。

世界最大の映画館チェーンともなれば、制作や配給の面からも発言権を強められそうだ。だが、米広告大手オグルヴィ・アンド・メイザーのアジア太平洋地区の責任者、ケント・ワータイム氏はこうクギを刺す。「中国寄りの映画ばかり配給しては成熟した先進国の視聴者は受け入れない」

過去には中国側の意向で台本の内容が変わった作品もある。映画が政治利用されるようなことがあれば、巨費を投じて手に入れた欧米の映画館に客が入らなくなるのは自明の理。万達は映画ビジネスに深く関われば関わるほど、中国とは異なる価値観を持つ欧米市場を意識した経営が必要になる。

相次ぐ買収で膨らむ有利子負債も課題だ。万達傘下の上場子会社、大連万達商業地産の負債総額(15年12月末時点)は約1900億元(約3兆円)。5月には同社をTOB(株式公開買い付け)で上場を廃止すると発表したが、買い付け総額は344億香港ドル(約4600億円)が見込まれる。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスが万達商業地産の格付け見通しを6月にネガティブに引き下げたが、万達グループの資金繰りそのものを不安視する声は少なくない。

積極買収で突き進む成長戦略と負債圧縮のバランスをどうとるか。「映画王」を目指す王董事長は難しいかじ取りを迫られている。

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