2018年8月16日(木)

万達、映画王へ布石 米製作会社4100億円で買収
「上映制限」回避狙いか

2016/1/13 0:30
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 中国の不動産大手、大連万達集団は12日、米映画製作会社のレジェンダリー・エンターテインメントを35億ドル(約4100億円)で買収すると発表した。ハリウッドの有力コンテンツを握り、世界の映画大手に躍り出る布石にしたい万達と、潤沢な資金を確保して巨大な中国市場に食い込みたい米社の思惑が一致した。ハリウッドの中国シフトが加速する。

 「今回の買収で、万達は米中という世界の映画市場で巨大な影響力を持つことになる」。12日、中国・北京で開かれた両社の調印式で、万達の王健林董事長はこう宣言した。

買収の調印式に臨む大連万達集団と米レジェンダリー・エンターテインメント(12日、北京)

買収の調印式に臨む大連万達集団と米レジェンダリー・エンターテインメント(12日、北京)

 レジェンダリーは2000年創業で、株主にソフトバンクのほか、ピーター・ティール氏などシリコンバレーの著名な投資家も名を連ねる。「ゴジラ」や「パシフィック・リム」など大衆向けの娯楽大作映画が得意だ。

 発表などによると、万達はソフトバンクなどの既存株主から株式を譲り受け、発行済み株式の過半数を取得するとみられる。レジェンダリーの創業者で最高経営責任者(CEO)のトーマス・タル氏は残りの株式を保有するほか現職にとどまる。

 中国企業が映画関連分野で海外企業を買収したケースでは過去最高額という。タル氏は「共に新しい国際的なエンターテインメント企業を創造したい」とコメントした。

 万達は映画関連事業への投資を拡大してきた。12年には米映画館チェーン大手のAMCエンターテインメントを26億ドルで買収。15年にはオーストラリア映画館チェーン2位のホイツ・グループを傘下に収めた。

 王氏の野望は世界的な映画会社になることだ。いまは米ウォルト・ディズニーや21世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントなど6大会社が世界を牛耳るが、王氏はかねて「6社の独占を崩したい。それが中国のためになる」と語っていた。

 米社の買収で、より多くのハリウッド作品を「中国映画」として国内上映できるメリットもありそうだ。中国では外国映画の年間上映数が34作品に制限されるが、米中の企業が合同で製作した場合は外国映画に含まれないグレーゾーンとして扱われる可能性がある。

 「アジアの不動産王」と称される王氏率いる万達がなぜ「世界の映画王」をめざすのか。

 グループ中核の上場企業、大連万達商業地産はマンションなどを売却した資金を元手に、新たな不動産開発に着手する手法で業容を急拡大させてきた。だが、中国経済の減速で“土地神話”は崩れ「不動産では大幅な利益は見込めなくなった」(王氏)。

 そこでショッピングセンター(SC)やホテルの運営など、サービスでもうける戦略にカジを切った。相乗効果が大きいのが映画だ。SCにとって映画館は最大の集客装置。有力なコンテンツを供給する映画製作会社を手に入れれば、集客効果はより高まる。

 レジェンダリーにとっては、格好の「タニマチ」が表れた格好だ。契約では買収後も経営面の独立性が保たれる。長期的には新規株式公開(IPO)をさせる計画で、中国を題材にした映画も製作していく。

 製作費が高騰するハリウッドでは、人気スポーツ同様、国籍にこだわらず時代ごとに勢いのある企業をオーナーとして迎えてきた。バブル期はソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収するなど日本が目立った。

 最近は中国マネーの流入が目立つ。昨年はアリババ集団が「ミッション・インポッシブル」最新作に投資したと発表。民間投資会社の復星集団は14年に「スタジオ8」に出資している。

 ハリウッドは巨大市場の中国を取り込むため、中華圏出身の俳優や中国の題材を使うことで市場開拓を進めてきた。加えて資金、流通面での融合が加速している。レジェンダリーは中国企業に傘下入りする恩恵を享受する一方で、それを心良く思わない支持層を失うリスクも負うことになる。

■中国、映画市場が急拡大

 今回の買収が成立した背景にあるのが、急成長を遂げる中国の映画市場だ。2015年も前年比で4割超の伸びとなり、伸び悩みが続く世界最大の北米市場に迫りつつある。17年には世界一になるとの見方もあり、同国映画ファンの争奪戦はさらに激しさを増しそうだ。

 中国の映画調査会社、芸恩諮詢(エントグループ、北京市)によると、昨年の中国の興行収入は67億8000万ドルと過去最高に達した。同年の北米は14年比で約7.3%増の111億1692万ドル。北米市場が100億ドル前後で推移するなか、その差は急激に縮まっている。

 中国の映画市場急伸は、所得水準が向上する中間層の拡大が大きい。カップルや家族が週末を過ごす娯楽として定着しており、新しい商業施設には映画館が併設されるケースが大半だ。映画館の大型化も進み、スクリーン数は15年は約3万1600と前年比で34%増えた。

 大連=原島大介、シリコンバレー=兼松雄一郎

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