コメ1割高く 17年産の卸値 日照不足で
コメの2017年産の価格が前年から1割程度上がる見通しだ。農協が農家に仮払いする「概算金」は新米で1割近く引き上げた地域が多く、卸値も同程度上がりそうだ。飼料米への転作で主食米の供給が減っているほか、東日本の日照不足も生育に影響した。スーパーの店頭も値上がりするとの見方がある。
全国の主要コメ産地で、13日までに17年産の主食米の概算金が出そろった。この日、概算金を決めたJA全農みやぎは主力銘柄の「ひとめぼれ」を60キロ1万2600円と前年から10%引き上げた。北海道産では「ゆめぴりか」が同7%高の1万4500円と、過去最高値を記録。「ななつぼし」は同10%高い1万3200円となった。
概算金は農協がコメの需給をみながら決める。農協にとって農家からのコメの仕入れコストが上がることを意味するため、農協やコメ卸の売値である卸値に影響する。すでに九州や関東産卸値は、前年から1割と概算金と同程度上昇している。
各地で引き上げが相次ぐのは、主食米の供給の減少観測が背景にある。現行の政策ではコメ生産を主食用から飼料用に切り替えると、10アールで最大10万5千円もの補助金が政府から出る。飼料米へのシフトと減反で今年の主食米の生産は前年から2%減の733万トン程度になる見通しだ。

これに加えて、今年は日照不足の影響も重なった。北海道東部で日照不足となり「道内では例年より平均3日の生育遅れ」(ホクレン農業協同組合連合会)。さらにほかの産地でも粒が小さくなる可能性が指摘されており、9月下旬の農水省の作況見通しが注目されている。
秋田産「あきたこまち」は、概算金が同9%高の1万2300円となった。「各地の小売店で扱う定番品だが、減反で生産量が足りない」(コメ卸)。県内の一部地域では、大雨で河川が氾濫した影響も出た。「水田に土砂が流れ込んで収穫を断念したのは100ヘクタール以上」(秋田県農林水産部)という。
一方、新潟は他地域に比べると小幅上昇にとどまった。新潟産コシヒカリは同1%高い1万3800円、魚沼コシヒカリは据え置きの1万7200円となった。16年産が異例の豊作だったので在庫が余り、新米を大きくは上げづらかった。
卸値の上昇は小売店の店頭価格にも影響を及ぼす。全国では既に新米を刈った九州産は店頭でも1割程度上昇している。
コメ卸からは「意図的に価格を上げすぎると消費が縮小してしまう」(木徳神糧の平山惇社長)との危惧が聞かれる。外食業者は「小売店と異なってメニュー価格を上げづらい」と、コメ価格上昇に警戒を示す。
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