2019年2月20日(水)

浅田真央は心揺さぶる「特別な選手」(ルポ迫真)

2015/9/23付
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2014年ソチ五輪のフィギュアスケート。米テレビNBCの実況解説席に座る長野五輪金メダリストのタラ・リピンスキーとジョニー・ウィアはその瞬間、絶句した。メダル争いの一角にいた浅田真央がショートプログラムのジャンプをひどく失敗、16位と出遅れ。大会前に浅田を独占取材するなどリピンスキーは「真央派」を公言してはばからない。その2人は、フリーで浅田がトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決め、本来の力を示すと、再び言葉を失った。今度は感動の涙で。

仲のいい(左から)コストナー選手、ニコル氏と(カナダ)

舞台裏では、フリーを滑り終えた浅田を振付師のローリー・ニコルが抱きしめた。「偉大なメンバーの仲間入りね」と語りかけたニコルが名前を挙げた。五輪のメダルだけはとれなかったカート・ブラウニング(カナダ)、五輪の金だけないミッシェル・クワン(米国)……。フィギュア界で語り継がれる伝説的スケーターだ。「すごいわ。真央も大丈夫よ」

浅田はリスクを恐れず、攻める。そんな女子選手は少ない。金妍児(キム・ヨナ、韓国)とのライバル関係が盛り上がったのは、質の高さを優先した金妍児と好対照をなしたことが大きかった。やれることは全部やり、完璧な演技で観客を引き付けたい――。これが浅田。「必ずしも結果に固執しない。前向きで、自分の演技の方が重要なんだ。今のフィギュア界にないもの。真央の復帰はすごくいい」。羽生結弦らの振付師で08年世界王者のジェフリー・バトル(カナダ)は話す。

ジャンプで勝負する選手は演技の細部をないがしろにしがちだが、浅田は違うとバトルはいう。「真央は常にいいプログラムを演じる。10歳のころから知っているけれど、昔から動きが自然」。高難度の技に挑むスリルを味わうと同時に美しい演技に感動を覚える。観客の欲張りな願望を満たす選手が浅田だ。

ソチ五輪、フリーの浅田がまさにそうだった。メダル絶望で迎える厳しい状況下、高難度の技に挑戦して成功しただけでなく、観客の心をわしづかみにしてみせた。「駄目だった後、どうリカバーするかが人生では大切。本当の勝者はメダルだけじゃない。立ち上がり、恐怖や不安とどう向き合ったか。だから真央は心に響くの」。競技生活で浮沈を繰り返し、3度目の五輪となるソチでメダルを取ったカロリナ・コストナー(イタリア)は共感を覚える一人だ。「真央は特別」とウィアはいう。結果抜きで浅田を見たいのだ。(敬称略)

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