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田中・堀江、最高峰リーグ日本人第1号 4年前の屈辱を胸に

(ラグビーW杯開幕特集)

全ては4年前の屈辱が始まりだった。ラグビー王国、ニュージーランド(NZ)でのW杯。日本代表は1分け3敗、期待外れの成績に終わった。「あれだけ応援していただいたのに……。自分たちが日本のラグビーの人気を落とした」。田中史朗は自分と同じ代表の主力でパナソニックの同僚、堀江翔太と話し合った。日本が脱皮するには何が必要か。結論は2人で海を渡ることだった。

スーパーリーグのハイランダーズ(NZ)で田中は初優勝を経験した

翌夏、田中はNZの南島にあるオタゴにいた。国内2部リーグのクラブに入団。チームのために166センチの小柄な体を張る姿が、次の扉を開いた。南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」(SR)のハイランダーズ(NZ)からの入団要請。ほぼ同時に、堀江の元へもレベルズ(オーストラリア)からオファーが到来。そろってSRの日本人選手第1号となった。

強豪国のクラブでつくるSRはスター選手ぞろい。田中を待っていたのはNZ代表のアーロン・スミスとの定位置争いだった。身体能力、キックの精度……。世界屈指のSHのプレーは傑出していた。

今年までの3年間、田中は十分なプレー時間が得られたわけではない。「アーロン(スミス)の動きやゲームのコントロール全体を学ぼうとしてきた」と話す。特に、相手の防御ラインの裏のスペースを見抜く力、そこへのキックの正確性が向上。日本が13年にウェールズ、14年にイタリアから史上初の勝利を飾った一因に、成熟した田中の試合運びが挙げられる。

昨年までプレーしたレベルズ(オーストラリア)で堀江はスクラムに磨きをかけた

堀江は移籍2年目の昨年、フッカーの先発をほぼつかんだ。防御網の隙を見つける眼力と柔らかい身のこなしを駆使し、小さい体でもボールを持って前進。課題のプレーも改善した。「練習後、毎日、コーチにスクラムの組み方を聞きに行った」。日本の弱点だったスクラムは日本の新たな強みになりつつある。

今年、SRに参加した日本人は過去最高の6人に増えた。2人がこじ開けた水脈は大きな流れとなった。日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチも「SR組が引っ張ってほしい」と期待する。

今年、田中はハイランダーズでリーグ初優勝を果たし、さらに経験を積んだ。堀江は首の手術でSR参戦を断念。しかし、「国内組」だけで行った4~6月の代表合宿では、リーダーシップを発揮。練習中も人一倍声を出し、SR基準のプレーを仲間に求め続けた。

この4年間、2人はともに日本のレベルを引き上げてきた。しかし、胸の中のしこりは消えていない。田中は先月、都内でテレビ番組の収録に臨んだ。お笑い芸人とのトークの合間、前回大会のハイライト映像が流れた。失望、後悔、自己嫌悪……。心の奥底の記憶がよみがえり、目から熱いものが流れ落ちた。

1次リーグで3勝を挙げて初の8強進出を目指す日本だが、過去の7大会の通算成績は1勝2分け21敗。最後の勝利は今回と同じくイングランド中心に開かれた1991年大会のジンバブエ戦まで遡る。最高峰の舞台での経験を積んだ田中は、日本が勝ちきれない要因は精神面にあると話す。

「海外の選手はみんな体を張っている。日本人はまだ足りない」。厳しい言葉は自らにも向く。「W杯にはどの国もみんな命を懸けてくる。僕も前回は日本のために体を張ろうという思いを持ってはいたけどそれがすごく薄かった。克服しないといけない」。4年前、チーム有数の勇敢なプレーをしていた選手がそう話す。海の外で得たものの大きさを示している。(谷口誠)

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