つり革盗難、首都圏で400本 15年11月以降
首都圏の大手私鉄やJRで電車のつり革の盗難が多発し、被害は昨年11月以降、少なくとも約400本に上ることが31日、鉄道各社への取材で分かった。各社は車内や駅の巡回を強化し、車内アナウンスでも情報提供を求めている。
「つり革が少ないのでは」。1月27日夜、西武鉄道狭山ケ丘駅(埼玉県所沢市)で、男性の乗客が駅員に通報した。男性が乗っていた電車を調べたところ、2両で計16本がなくなっていた。広報担当者は「盗んで何に使うのか分からない。乗客が困るのでやめてほしい」と訴える。同社は県警に被害届を出した。
東京急行電鉄は田園都市線で182本、東横線で17本、目黒線で2本が盗難の被害にあった。東京メトロは日比谷、千代田、有楽町、副都心の各線で計80本。手を掛ける部分とベルトがいずれも盗まれた。
小田急電鉄54本、東武鉄道16本、京王電鉄9本で、JR東日本も首都圏の路線で約20本。営業運転中に盗まれたとみられるが、目撃情報はない。
揺れる車内で立っている乗客を支えるつり革は安全性を確保するため、強度や耐久性に関する規格を日本鉄道車両工業会(東京)が定めている。同会の田中裕輔技術部長は「規格は通常の使用時の引っ張りやねじりに対する強度、耐久性を示している。故意に外されることは想定していない」と指摘。つり革メーカーの社員も「普通に使っていて外れることはない」と断言した。
京浜急行電鉄は中古のつり革をイベントで販売しており、昨年は1本100~200円で約500本を売った。「売れ行きは悪くない」という。
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「転売してもそれほど値の付く物ではなく、いたずらか、騒ぎになることを考えての行為ではないか」と推測している。〔共同〕