受動喫煙、肺がんリスク1.3倍 がんセンター
因果関係「確実」と指摘
国立がん研究センターは30日、家庭や職場など人が集まる場所で周りが吸ったたばこの煙にさらされる受動喫煙がある人は、肺がんにかかるリスクが約1.3倍に高まるとする研究結果を発表した。同センターはこれまで受動喫煙が招く肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」としてきたが、科学的な裏付けがとれたとして「確実」に引き上げた。予防対策などに生かす。
国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長は「日本の受動喫煙対策は世界の中で最低レベルにある。東京五輪を契機に屋内完全禁煙を実施する必要がある」と訴えた。
研究グループは受動喫煙と肺がんの関連を示した426本の論文のなかから、1984年から2013年に発表された9本の論文を選び、たばこを吸わない人が受動喫煙によって肺がんになるリスクを分析した。
その結果、受動喫煙のある人はない人より肺がんにかかるリスクが1.28倍だった。
受動喫煙と肺がんの関係は80年代から指摘されていたが個別の研究では科学的な根拠が無く、リスクを高めるかどうかは確実とは言い切れなかった。複数の論文をそろえて分析したことで、受動喫煙が肺がんのリスクを高めることが確実となった。
研究結果を踏まえ、同センターは喫煙、飲酒、食事など6項目で予防法を示している「日本人のためのがん予防法」でも現行の「他人のたばこの煙をできるだけ避ける」から「煙を避ける」と修正した。
受動喫煙は肺がんだけでなく、循環器疾患や呼吸器疾患などにも影響する。厚生労働省研究班は受動喫煙が原因で死亡する人は、肺がんや脳卒中などを含めて国内で年間1万5千人に達するとの推計をまとめている。同センターの片野田耕太・がん登録統計室長は「遅きに失した感はあるが、対策を急ぐ必要がある」と話す。