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濃密に一作入魂を貫く 河野多恵子さん死去

「書きたいことが向こうから押し寄せてくる。それを見逃さないことが大事」。昨年、文化勲章受章が決まったときの会見でそう語っていた。以前には「小説を書くことは奇跡だから、創作衝動が起きないと書いてはいけない」とも。50年以上にわたる一作入魂の姿勢が、寡作ながらも密度の濃い作品を生み出した。

マゾヒズムを描いた「みいら採り猟奇譚」(野間文芸賞)のように、一般から見れば倒錯と映る性愛などをモチーフに人間の深層を描いた。敬愛していたのは谷崎潤一郎。「この世はいいところだという思いは持っている」という人生を肯定する気持ちは谷崎と共通する。

66歳から夫で洋画家の市川泰さん(2012年死去)とともにニューヨークに滞在、06年に帰国するまで14年間住んだ。07年、本紙夕刊に連載したエッセーの打ち合わせの席では「医療面では日本は天国だけれど、アメリカは緊張感と解放感の両方があって刺激的だった」と振り返っていた。

芥川賞選考委員の「後輩」である作家の山田詠美さんとの対談本「文学問答」(07年)で、狭義の本当の文壇は純文学作家と評論家、編集者で構成すると語っていた。「人間の生き方を描く」純文学を大切にした作家だった。(編集委員 中野稔)

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