認知症男性の徘徊事故、家族の賠償責任認めず 最高裁判決
JR逆転敗訴
愛知県で2007年、徘徊(はいかい)中に電車にはねられ死亡した認知症の男性(当時91)の家族にJR東海が損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、妻に約360万円の支払いを命じた二審判決を破棄し、家族の賠償責任を認めない判決を言い渡した。JR側の逆転敗訴が確定した。

一審・名古屋地裁は長男の監督責任と妻の過失責任を認め、2人に約720万円の賠償を命令。二審・名古屋高裁は長男の監督責任は認めなかったが、妻は監督責任があったとして約360万円の支払いを命じた。
上告審では同居していた妻と離れて暮らしていた長男の責任の有無が焦点になっていた。
上告審で家族側は「家族の誰かに監督責任があるとすると認知症患者に関わりを持たない以外に方法がない」として監督責任を否定。妻は必要な注意を払っており賠償責任もないと訴えた。JR側は「妻だけでなく介護の方針を決める立場にあった長男にも監督責任がある」と主張していた。
一、二審判決によると、男性は07年12月7日、自宅で介護していた妻らが目を離した間に外出し、愛知県大府市のJR共和駅構内の線路に入って電車にはねられ死亡した。男性は認知症で常に介護が必要な状態と診断されていた。JR東海は家族が監督義務に違反していたとして、振り替え輸送費など約720万円を支払うよう求めて提訴した。