建設石綿訴訟、建材メーカーに責任 国・9社に賠償命令
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんなどを発症したとして、元建設労働者と遺族計27人が国と建材メーカー32社に計約10億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、京都地裁であった。比嘉一美裁判長は大半の原告について国とメーカー9社の責任を認め、原告25人に計約2億1600万円を支払うよう命じた。同種訴訟でメーカーの責任を認めたのは初めて。
賠償を命じられた建材メーカーはエーアンドエーマテリアル(横浜市)やニチアス(東京)など。建設現場での石綿による健康被害を巡る集団訴訟は全国6地裁で起こされており、判決は5件目。国への賠償命令は東京、福岡、大阪の各地裁に続き4例目。
判決理由で比嘉裁判長は、国や建材メーカーが危険性を認識できた時期は遅くとも▽石綿建材の吹き付け作業は1971年▽それ以外の屋内作業は73年▽屋外作業は2001年――と認定。その上で、それぞれの作業で翌年から警告表示などの対策を怠ったとして賠償責任を認めた。
賠償責任を認定した時期は東京地裁判決などより早く、救済範囲は広がった形。屋外作業については初めて賠償責任の発生時期を示した。
建材メーカーの責任については「おおむね10%以上のシェアを有する建材メーカーが販売した建材は、原告らが年に1回程度は使う現場で働いていた確率が高い」とし、健康被害との因果関係を認めた。過去の訴訟では「原因企業を特定していない」などとして退けていた。
さらに原告のうち「一人親方」と呼ばれる個人事業主については、先行訴訟と同様、労働基準法上の「労働者」に当たらないため保護対象外として国の賠償責任は認めなかったが、メーカー側の責任を認定。国の賠償額を15人に計約1億400万円としたのに対し、メーカー側には23人に計約1億1200万円を支払うよう命じた。