幻のラジオ体操第3復活 福島の被災者ケアに活用

2016/3/29 11:13
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戦後2度の放送中止を経て幻となっていた「ラジオ体操第3」が、約70年の時を経て大学教授らの手でよみがえった。「第1」「第2」に比べて動きが複雑でテンポが速いのが特徴で、福島県では東日本大震災の被災者の心身ケアに活用されるなど、健康促進に取り組む自治体や企業に導入が広がり、解説書やCDも発売された。

3月上旬、龍谷大(本部・京都市)の大津市のキャンパス。学生3人が音楽と号令に合わせ体を前後屈させたり、手足を開いて跳躍したりする「第3」体操に取り組んでいた。指導する学生サークルの饗庭(あいば)勝さん(23)は「独特な動きが難しいが、皆がそろったときは達成感がある」と話す。

ラジオ体操は昭和天皇即位の礼の記念事業の一つとして企画され、1928年に国民の健康増進を目的にNHKで放送が開始された。32年には青壮年向けの第2が始まり、第3は体力向上と精神高揚を目指した「大日本国民体操」として39年から放送された。

戦後、軍事色を懸念した連合国軍総司令部(GHQ)の干渉や、複雑な動作をラジオで伝えるのが困難なことなどから、いずれも2度にわたり放送中止に。内容を刷新した第1、第2は再開されたが、第3は47年以降お蔵入りとなっていた。

2013年、うつ病予防に使えないかと龍谷大の安西将也教授(公衆衛生学)が目を付けたのがこの体操だ。動作の図解や音源を基に同僚の井上辰樹教授(運動生理学)と再現。第1、第2より高い心拍数を維持でき、体脂肪減少や不安感・抑うつ症解消に役立つ有酸素運動だと分かった。

職員や町民向けに導入した滋賀県多賀町での調査では、精神状態の改善や体重・腹囲の減少といった効果が実証され、話を聞いた県外の自治体や企業にも広がっている。

福島県白河市は昨年、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故の後に同県南相馬市や浪江町、富岡町からの避難者が暮らす仮設住宅で、健康支援事業の一環として第3を教える講座を開いた。健康増進課の担当者は「仮設住宅に住む人は狭い部屋に引きこもりがち。テンポの速い第3は運動不足を解消し、心にも良い影響がある」と話す。

大阪府門真市にあるパナソニックの社内分社AVCネットワークスの事業所では、朝と昼の始業前に従業員約600人が体操。担当者は「第1、第2では人が集まらず、第3を導入したら珍しさから参加者が増えた。話し合いながら覚えるので、職場の雰囲気も良くなった」と喜ぶ。

注目の高まりで昨年、角川書店がDVD付き解説書を出版し、日本コロムビアもCDを発売した。安西教授は「子供から大人まで幅広く実践してもらえれば」と期待している。〔共同〕

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