北海道・奥尻高が全国募集 「島全体が教材」アピール
北海道・奥尻島にある奥尻高校は、2017年度入試から生徒を全国募集する。スキューバダイビングのライセンス取得や、町おこし政策の提言など、「島全体が教材」という離島の環境を生かした授業をアピール。少子化と人口流出で存続が危ぶまれる高校を、島民一丸で支える。
全日制普通科の奥尻高は1学年の定員40人に対し全校生徒が40人で、大幅な定員割れが続く。1995年からスキューバダイビングを選択科目に取り入れ、遠方からの入学希望もあったが、通学規定上、島を含む北海道檜山地方の生徒しか受け入れができなかった。
16年度に道立から町立に移管。町は規定を改め、1学年で最大20人を全国から受け入れられるようにした。下宿先として民宿の20部屋を確保し、下宿代や帰省費用など、1人当たり最大年間約70万円を町が補助する。
10月下旬、島外から初の入学希望者が見学に訪れた。約370キロ離れた北海道オホーツク地方、置戸町の中学3年、菅野速人さん(15)。俵谷俊彦校長の説明に「ダイビングの資格が取れたらどんな仕事に就けるのですか」と熱心に質問した。
下宿先の候補となる民宿の葛西幸子さん(73)は「若い人にぜひ来てもらいたい」と歓迎する。
奥尻島は93年、北海道南西沖地震による巨大津波で198人の死者・行方不明者が出た。人口が減り、現在は約2800人。主力産業の漁業や観光業も環境は厳しい。奥尻高は生徒自身が島の課題と向き合うことで、島の将来を担う「未来のリーダー」育成を目指す。
選択科目の「奥尻パブリシティー」では、観光客や移住者向けパンフレットを作成。9月には新村卓実町長らの前でプレゼンテーションした。「町おこしワークショップ」では、島で起業したすし職人やワイン生産者らを講師に招き議論した。
離島振興を進める公益財団法人「日本離島センター」(東京)によると、全国の離島にある高校は約60校(14年時点)。島根県の隠岐島前高校のように、授業内容を充実させて島外からの生徒を増やした高校もある。
奥尻高は9~10月、道内のほか青森、仙台、東京、静岡で説明会を実施。俵谷校長は「きめ細かい指導ができるのも強み。まずは一人でも島外から来てもらい、島の新たな魅力を発掘してほしい」と期待している。〔共同〕