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空き家解体、根拠は「税」 所有者不在証明で突破口

神奈川県横須賀市で長く放置されていた半壊状態の空き家が、市によって解体された。行政による代執行の壁となっていたのは「所有者不在」の証明。今年5月に全面施行された「空き家対策特別措置法」を適用し、土地・建物の納税情報を利用することで、3年前から続いた懸案にようやく突破口が開いた。

10月下旬、横須賀市の住宅地で、屋根や壁の一部が崩れた空き家の撤去工事が始まった。作業員が古びた板壁にハンマーを振り下ろし、さびたトタン屋根を引きはがす。

「約40年前には賃貸で4人家族が暮らしていたが、長い間、ほったらかしになっていた」と近隣の男性(79)。「台風の時は屋根の破片が飛んできて危なかった。ようやく安心できる」と笑顔で話した。

登記簿などによると、空き家は約60平方メートルの木造平屋建て。大正時代の1920年に建物の記載があり、55年に個人名で購入されたのが最後で、増改築や建て替えの有無も判然としない。土地は相続などを経て、90年に横浜市の不動産会社が購入し、同社が2002年に解散した後もそのままになっている。

市の建築指導課は12年10月に「屋根の一部が落ちてきそうだ」と市民の苦情を受け、倒壊の危険ありと判断。登記簿や住民票、戸籍謄本を照会し、周辺住民にも話を聞いて調査を進めたが、所有権の行方をつかめずに足踏みが続いた。

所有者が確認できない危険な建物について行政による撤去を認めている建築基準法の適用は、「所有者の確認を尽くした」とする根拠が不十分とみて断念した。

12年に施行した市独自の空き家管理条例も「所有者不明の場合の規定が曖昧で、解体に踏み切った後に所有者が現れて訴訟を起こされるリスクがある」(担当者)と適用に至らなかった。

膠着状態を打開したのは5月の空き家対策特別措置法の全面施行。同法によって、自治体内の税金を扱う部署が持っている固定資産税の情報を所有者確認に利用することが可能になった。

建築指導課は資産税課から情報を得て、空き家の土地・建物について誰も納税していないことを確認。所有者の調査を尽くしたとして、9月に取り壊しを公告し、解体にこぎ着けた。

市内の空き家は13年には約2万9千戸まで増加。所有者が分かっている建物も含め、安全面や衛生面で著しく問題がある約60戸を特措法上の「特定空き家」に指定し、対応を検討している。

ただ、今回の空き家の解体費用約150万円は市の負担。所有者不在の更地を放置すれば、雑草が茂り、害虫の発生などの問題が起きる恐れもある。「空き家がなくなっても一件落着とはいかない」と建築指導課の担当者はこぼす。

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