歌麿、墨一色の美人画 福岡市美術館で公開へ
正面向く遊女「珍しい」

江戸時代の浮世絵師、喜多川歌麿が墨一色で花魁(おいらん)らを描いた肉筆画が見つかったと22日、福岡市美術館が発表した。墨だけで描いた歌麿の美人画が確認されたのは初めてで、花魁を真正面から描いた作品も珍しいという。専門家は「非常に価値が高い」としている。
見つかった美人画は「花魁と禿(かむろ)図」で、縦117.6センチ、横46.3センチ。正面から捉えた花魁と、その世話をする「禿」の後ろ姿を墨の濃淡や線の強弱で立体感を持たせて描いている。江戸時代の戯作者、山東京伝の賛文が記されている。
国際浮世絵学会の石田泰弘理事が4月、東京在住のコレクターが所有していた美人画を確認、署名などから歌麿の作品と判断した。石田理事によると、寛政2~5年(1790~93年)ごろに描かれ、歌麿が円熟期を迎える前の作品とみられる。
歌麿の肉筆画はこれまで約50点が知られているが、美人画の多くは鮮やかな彩色で描かれている。花魁の姿を斜めでなく真正面から描いている点や山東京伝が賛文を書いている点も珍しいという。
石田理事は「注文主の求めに応じて描く肉筆の美人画は、鮮やかで豪華絢爛(けんらん)に描くのが一般的」としたうえで、「墨一色で美人画を描いた理由があるはずだ。研究されるべき興味深い作品」と話している。
作品は8月8日から同美術館で開かれる肉筆浮世絵の展覧会で公開される。