文化庁が数年内に京都府へ全面移転することが22日、決まった。京都市民からは歓迎の声が上がる一方、文化庁職員からは「組織としての一体感がなくならないか」と懸念する意見も出ている。
京都市中京区の京都市役所前。同市伏見区のパート、山本陽子さん(55)は「日本の魅力を世界にいっそう発信するきっかけとなってほしい」。同市右京区の女性会社員(50)も「経済の活性化につながるはず」と期待した。ただ、同市北区の男性会社員(36)は「京都は大学が多く若者でにぎわっている。地方創生というなら、もっと人口減少に悩む自治体に移転すべきだったのでは」と疑問を呈した。
文化庁の職員は昨年7月時点で363人(非常勤職員などを含む)。国会対応などで東京には1割程度の職員しか残らないという案が出ている。若手の男性職員は「ずっと東京で勤めるつもりで人生設計をしてきた。突然勤務地を変えろなんてむちゃだ」と嘆く。
文化庁の所管業務は文化財行政だけでなく芸術文化振興や著作権関連などもある。別の職員は「東京と京都に分かれることで組織としての一体感が失われかねない」と話す。一方、別の職員は移転を前向きに受け止め「関西は行政と財界の距離が近く、事業がスムーズに進む印象がある。モデルとなる事例を作れれば」と語った。