「スーパーエルニーニョ」終息、熱帯の巨大雲が引き金
東京大学大気海洋研究所と理化学研究所、海洋研究開発機構は、1997~98年に発生して世界に異常気象をもたらした「スーパーエルニーニョ」現象が急に終息した原因を突き止めた。熱帯の巨大雲が引き金になっていた。台風の発生予測などの精度向上にもつながる成果という。
エルニーニョは太平洋の東側の海面温度が平年より高くなる現象。特に強まった状態はスーパーエルニーニョと呼ばれ、97~98年のほか2015~16年にも発生した。世界各地で豪雨など異常気象の一因になったと考えられている。97~98年のスーパーエルニーニョは急激に海面温度が下がって終息したが、その仕組みは未解明だった。
研究チームは雲の発生や動きを計算する手法を改良し、海洋との相互作用を精度良く予測する手法を開発した。理研のスーパーコンピューター「京」を使った数値計算で、赤道付近に巨大な雲ができて東に進む「マッデン・ジュリアン振動」と呼ぶ現象がスーパーエルニーニョ終息の引き金になったと突き止めた。
東西方向の数千キロに広がる巨大な雲から吹き出す東風が強まって海面付近の温かい海水が動かされ、入れ替わりに冷たい海水が下から上がってくるようになったという。
マッデン・ジュリアン振動は台風発生や日本の梅雨などにも影響を及ぼすとされる。東大の宮川知己特任助教は「今回の手法を応用すれば、数カ月先の台風の発生傾向などを予測する精度の向上も期待できる」と話す。